安易な行動を慎み「市場のことは市場に聞け」

企業業績次第で1万2000円程度までの調整も

日銀も黒田総裁が「やれることはなんでもする」と公言してきたとおり、マイナス金利の導入を押し通したが、結果は言うまでもない。中銀の政策担当者の努力にもかかわらず、インフレ率は低迷し、金融市場は混乱している。景気の足取りも徐々に不透明になりつつある。現在の金融市場動向を見る限り、これらの政策はいまのところ失敗である。

筆者は本欄で、FRBの利上げ後は株安・円高に進むと繰り返し解説してきた。米利上げだけでも十分に株価が下げていくと見ていたが、これにマイナス金利が加わったのだから、その見方をさらに強化させる必要があるだろう。ECBのマイナス金利導入の影響が、ドイツ銀行の信用問題という形で浮上し、日銀のマイスス金利導入で株安・円高が助長された。日銀の黒田総裁は、「マイナス金利の影響は出ない」と言明していたが、実際にはMMFの運用が停止され、預金金利が引き下げられるなど、国民生活にまで影響が出ている。

クラッシュが起きても驚いてはいけない

いうまでもなく、中銀の政策担当者はきわめて優秀であり、十分すぎるほどの知識を持ち合わせている。しかし、それでも結果はこの通りである。これは、現代の経済や市場の構造が、これまでの理論では説明できないものに変化したことが理由なのだろう。ECBや日銀は、金利を引き下げ、資金需要を喚起したかったのだろうが、その資金需要がないのだから、マイナス金利の効果はないに等しい。

過去のバブルの反省もあり、借金をしてまで資産を購入するといった需要は生まれにくい。またこれまでに量的緩和策で景気・経済を持ち上げていることもあり、これ以上の緩和策の効果は限定的になりやすい。そんな中で、「苦肉の策」として導入されたマイナス金利は、結果的に銀行収益を蝕み、投資家の資産運用の幅を縮めさせた。そして、金融不安を高めることになった。景気・経済に対して、金融政策が出来ることはきわめて限定的になっていることだけは確かだ。

今回の中銀の一連の政策により、株式市場や為替相場がどのような結末を迎えるのかはわからないが、少なくとも、現在の急激な市場の変動が近い将来の惨事を示唆している可能性はある。今年は年初から株価が急落するなど、将来の危機を暗示する動きがみられた。それが、日銀のマイナス金利導入でさらに強化されたのではないか。サブプライムショック級のクラッシュが起きても驚いてはいけない。株価変動の理由や背景を語るより、市場動向をしっかりと見極め、安易な行動は慎むべきだ。

「市場のことは市場に聞け」。いまこそ、この言葉に耳を傾けるときである。筆者は従来から日経平均株価は5月末までに1万4500円まで下落するとみていたが、今回のイベントで下方修正の必要性を感じている。日経平均株価が4ケタになるまで下落するかはわからないが、企業業績の下方修正が確定的であることから、業績見通し次第では1万2000円程度までの調整もあり得るとの考えに変わりつつある。

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