グッドウィルのバラ売り、切り捨てはない−−若山陽一 ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングス(UT)社長兼CEO
外資主導の再建が進み始めた矢先、118億円を投じグッドウィル・グループ(GWG)株3割強を取得して筆頭株主に躍り出た新興勢力UTの狙いは。若山社長の独占インタビュー。
経営再建中のGWGの筆頭株主となりました。あえて火中の栗を拾った狙いは?
このままでは人材サービス業界全体が、立ち行かなくなるとの危機感からだ。不明朗な賃金天引きや違法派遣による事業停止命令など、業界トップだった同社の不祥事が、業界に与えたダメージは計り知れない。他方でGWGは常用換算で約7万人の労働者を抱えており、彼らのためにも早期再建は必須。弊社の持つノウハウを生かし再建に参画したいと立候補した。株式取得は不退転の決意の証しだ。経営資源を投入するからには一定の持ち分の維持は必要だが、必ずしも過半数の取得にはこだわっていない。米サーベラスなど債権者にとっても、実行能力の伴う再建プランの提示はプラスのはずだ。
UTが提案したGWG再建プランの内容は?
3月25日の初会談では1、2枚分の要約を示しただけだが、すでに40枚分ほどの詳細な計画を用意している。大前提として、日雇い派遣も含めて既存事業を切り売り、切り捨てするつもりはまったくない。半導体・液晶製造関連に特化した弊社の派遣事業の特徴は、派遣スタッフを正社員雇用して教育、育成し付加価値を高める「常用育成派遣」にある。このモデルで同事業の営業利益率10%と業界トップクラスを確保している。これをGWGの技術者派遣だけではなく、製造派遣や日雇い派遣でも導入していく。社会問題化しているスタッフの待遇改善にも直結する話だ。
現在計画されている外資連合への第三者割当増資が実施されるとUTの持ち分は大幅に希薄化されますが対応は? また再建プランを実行するための人材確保の方針は?
これから同社の資金繰りの状況を把握して十分理解しないと何ともいえない。それが合理性のある内容なのかどうか、きちんと聞いたうえで賛否を判断したい。昨今の業界再編でもともとこの業界にいた優秀な人材が散在している。そうした経験者を募り、精鋭部隊を作り上げたい。
稼ぎ頭のグッドウィル・プレミア(旧クリスタル)の利益水準は大幅に落ち込んでおり、コンプライアンス問題も鎮火していません。
日増しに事業の毀損が進んでいるのは間違いない。さまざまな問題を引き起こした事業の仕組みを再構築することが急務だ。誰が株の過半を握るだとか、経営権を握るだとかよりも、どうやって事業を再建するかこそが最重要だ。少なくともこれまでのように派遣スタッフを商品化して使い捨てする時代は終わった。
現在も第2位株主の折口雅博元会長と連携することは?
ありえない。お会いしてもいません。
わかやま・よういち
1971年2月23日生まれ。テンポラリーセンター(現パソナ)、クリスタルを経て、95年に製造派遣・請負の日本エイムの前身を創業。2007年に半導体装置販売のエイペックスとの共同持ち株会社である当社設立以来現職。
(風間直樹 撮影:今井康一=週刊東洋経済)
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