国際ビジネスブレイン代表取締役・新将命(Part3)--腐ったトップの特徴はABCにある

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--GMに代表される米国の自動車産業が全体的に落ち込んでしまったのも、経営原則を軽視したことにあると思いますか。

そうですね。ロシアに「魚は頭から腐る」ということわざがあります。会社は新入社員から腐ることはありません。腐るとすれば社長から腐るんです。GMやクライスラーなどは、トップが腐っているのでしょう。

腐ったトップの特徴には、経営基本を怠った「ABCの病」があります。Aは「Arrogance:傲慢」。Bは「Basics:基本」、つまり理念やビジョンの欠如ですね。Cは「Complacency:自己満足」で、たとえば業績悪化を景気のせいにするような安易な現状是認です。潰れる会社は大体このABCによって潰れます。

ちなみに、経営者の品格や人格は、トップの顔に表れます。理念のある会社と、業績は良いけど理念のない会社とでは、トップの顔が見るからに違いますよ。男の顔は履歴書です。

--同感です。1万人以上の経済人にインタビューをしてきましたが、会った瞬間にわかります。ダメな会社は役員フロアだけ毛足の長い絨毯だったりと、社長室や役員室にも社格は表れます。

社長室に有名な政治家やプロゴルファーとの2ショット写真を飾ったりというのもダメですよね(笑)。

--社長を経験する前と後で、何か意識は変わりましたか。

社長になる前まではスキルさえあればいいと思っていましたが、ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長になって初めて、スキルでは人をリードできないことがわかりました。専門外のスキルは各部門のエキスパートにはかなわないのですから、「社長は自分よりスキルが劣るし意見も違うけど、ついていきたい」と社員に思われる人間作りが必要です。勝負は人間力。人間力は、信頼と尊敬です。部下が増え責任が重くなるにつれ、スキルに加えて人間力やマインドを高めることが重大になってくると思います。

--人間作りには何が必要だと思いますか。

1つめは、情熱があること。2つめは、「他責」ではなく「自責」の人であること。3つめは、胆識(見識+決断力+断行力)を養うこと。4つめは、「肯定的な思考」、「謙虚な心」、「感性を磨くこと」、「向上心・向学心を持つこと」の4Kを大切にすることです。中でも1番重要なのは、意欲や志といった情熱でしょう。

(写真:今井康一)

あたらし・まさみ
 1936年東京生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40数年にわたり社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに経営者、経営幹部を対象に経営とリーダーシップに関する講演・セミナーを通じて国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組んでいる。また“エグゼクティブ・メンター”として経営者・経営者グループに対する経営指導・相談の役割を果たしている。実質的内容の希薄な虚論や空論とは異なり、実際に役に立つ“実論“の提唱を眼目とした、独特の経営論・リーダーシップ論には定評がある。著書・CD教材多数。近著『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ランダムハウス講談社刊)は、悩み多き部課長だけでなく、現役経営者、これからリーダーになる若手ビジネスマンの間でも話題。

■CEOへの道は、エグゼクティブ向けの人材会社・リクルートエグゼクティブエージェント主催のセミナー「Road to CEO」との連動企画です。

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