■CEOへの道は、職業としての”社長”を選び、第一線で活躍するプロによるトークセッション。将来、経営層を目指すオーディエンスに、自らの経験とノウハウを語る。
--意欲があり、情熱を維持できる人というのは、そう世の中には多くはないように思います。
ビジネスパーソンには5種類いると考えています。
1つめは、自ら火をつけて燃える「自燃」型(組織全体の5~10%)です。2つめは、誰かがマッチを擦ってくれれば燃える「可燃」型(80~90%)。3つめは、一生燃えないか、燃え尽きて灰と化してしまった「不燃」型(1~2%)。4つめは、人の火を消す「消火」型(1~2%)。5つめは、マッチの擦り方を知っている「点火」型(5%)です。自燃であり点火できる人が、社長やリーダーですね。
--自燃型でいるためにはどうしたらよいのでしょうか。
大抵の人が「成功」の反意語を「失敗」と言いますが、経営学者で元宮城大学学長の野田一夫さんは、「成功の反意語は『目標のない生き方をすること』」だとおっしゃいました。
家と会社を往復するような生活を単調に繰り返す人は、「成り行き人間」。それなりに仕事はしますが、人生や生き方に意識的な付加価値作りをしない典型的なダメ人間です。伸びている人やビジネスで成功している人は、大抵納得目標を段階的に設定している「目標人間」です。自燃でいる秘訣は、短期と長期、2種類の納得目標を位置付けることに尽きます。もうひとつ、情熱の火を分けてくれる人と付き合うことも大切です。どうせなら30分話していてやるせなくなる人よりは、勇気、覇気、活気、やる気をくれてこちらが元気になれる人を選んで付き合ったほうがいい。人間は環境の動物ですから、付き合う人間で決まります。情熱の火を維持するには、女房のすきを狙って浮気するのではなく、面白い芝居や映画、海外旅行など、日常を変えない範囲で環境を変えることも有効です。
--点火の方法を具体的に教えて下さい。
リーダーシップ能力と点火方法は限りなくイコールです。点火方法とは、一般的に言えば部下の動機付けにあたり、方法は5つあります。
1つめは、現状を示すと同時に、将来の方向性を示してあげること。今後どうなりたいかという哲学的な「理念」と数値的な「目標」を確認し、どうやって達成させるかという「戦略」や細かく現場に落とし込む「戦術」を考えるのです。忙しくても夢があって光が見えれば社員の疲労感、疲弊感、閉塞感はなくなります。
2つめは、「ストレッチ納得目標」を与えること。ある心理学者の研究によると、同じ目標を与えても、押し付けられたと認識している場合よりも、目標に納得している場合のほうが約3倍もやる気があるんだそうです。大切なのは、目標を作るプロセスに部下を参加させること。意見の交換や議論をしながら一緒に目標を作れば、目標に対するコミットメントと愛着が生まれます。
さらに、能力の15~20%くらい難易度を引き延ばした目標を与えることが重要です。アメリカのビジネスマンの言葉で言うと「challenging but attainable」(挑戦的ではあるけれど達成可能である)、日本語で言うなら「やってやれないことはない」目標です。この「ストレッチ納得目標」を与えれば、部下のやる気が3倍近く高まります。お金はビタ一文もかからず、話し合う少しの時間でできてしまいます。