統合実現でも晴れない新生・あおぞら銀の深い霧、収益モデルが破綻、公的資金にも壁 

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当局も慎重論が根強い公的資金の追加投入

それでも統合へと突き進もうとしている両行だが、実現までにはなお高いハードルも残されている。公的資金の追加投入問題だ。

巨額損失の計上で、3月末時点における新生銀の自己資本比率は1年前の11・74%から8・35%へと大幅に悪化、あおぞら銀も14・29%から11・60%へと低下した。健全性の指標とされる8%こそクリアしているが、中核的自己資本(TierI)は新生銀が5800億円、あおぞら銀も5246億円にすぎない。仮に不動産ノンリコースローンが全額棄損すれば、それだけで資本基盤が吹き飛びかねない。

そうした中、時間を稼ぐ観点からも両行が金融当局に打診しているとされるのが公的資金の再投入。当初は難色を示すとみられていた筆頭大株主の米投資ファンド、JCフラワーズ(新生銀)とサーベラス(あおぞら銀)も、投下資本が紙切れとなるリスクと株主価値の希薄化リスクをはかりにかけたうえで、ここにきて「公的資金の追加注入が受けられることを前提に経営統合に賛同する意向に転じた」(関係筋)とされている。

とはいえ、金融当局内部には「短期的に発生した損失を穴埋めするために公的資金は使えない」として、追加投入への慎重論が根強いのも事実。与謝野馨・経済財政・財務・金融相も「(追加投入には)大きな説明の根拠が必要だ。その是非は言及できない」と指摘、安易な投入には歯止めをかける意向を示唆している。

破綻による一時国有化を経て再民営化された新生銀に対する政府出資は今も普通株の2割強に及び、あおぞら銀には優先株で1800億円(簿価)の公的資金が残されたままだ。再投入に踏み切るにしても「まずはそれをきちんと返済してからというのがスジ」(金融庁幹部)との意見も少なくない。メガバンク関係者からは「ビジネスモデルが成り立たない以上、債務超過に陥る前にいっそ自主廃業しては」といった厳しい声すら漏れてくる。

(週刊東洋経済)

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