米国は景気回復に向けあらゆる政策を講じよ--ブラッド・デロング カリフォルニア大学バークレー校教授
各国政府は、世界経済を深刻で長期にわたるリセッションから救い出すことができるのだろうか。3カ月前、私は「それは可能だ」と答えた。しかし、現在はそれほど確信を持って言い切れない。
問題は、政府が何をすべきかわかっていないことだ。リセッションが深刻化・長期化するのを回避するための標準的な政策リストは、2世紀近く前の1825年にイングランド銀行のコーネリアス・ブーラー総裁と『エコノミスト』の編集者ウォールター・バジョットがすでに作成している。
金融危機の時代の最大の問題は、安全で流動性の高い資産(したがって価値のある資産)に対する投資家の需要が非常に大きいのに対して、生産資本など実体経済を支える資産に対する需要が少ないことだ。その解決策は、政府が安全で流動性の高い資産の需要を満たすために通貨供給量を増やすことだ。
ケインズが指摘しているように、「人々が月を欲しがるから失業が増える」のである。月とは、安全かつ流動性の高い資産のことである。ケインズは続けて「欲望の対象(すなわち通貨)は作り出すことができず、その需要を簡単に抑制できないとき人々は失業する」と書いている。これに対する解決策は、「青いチーズ(すなわち中央銀行が発行する銀行券)は実際には(現金と)同じものであることを人々に納得させ、青いチーズ工場(すなわち中央銀行)を人々の管理下に置くこと」であると言っている。
中央銀行は、国債購入で現金を供給することで現金需要を満たし、その価格(金利)を引き下げることができる。現金に対する過剰需要がなくなると、生産資本など実体経済を支える社債や株式の過剰供給もなくなる。したがって、標準的な公開市場操作による金融緩和政策は、金融危機に際して最初に講じなければならない政策である。
私は3カ月前に、景気低迷期に名目支出を一定に保つために拡張的な公開市場操作を行うことを大半の経済学者が支持していると指摘したが、それは正しかった。また、多くの経済学者が支払いシステムの崩壊のリスクが最も重要な問題となり、それによって現金需要が不自然な水準にまでに高まるのを阻止するために、中央銀行が金融システムの安定性を保証することを支持していると書いたが、それも正しかった。