米国は景気回復に向けあらゆる政策を講じよ--ブラッド・デロング カリフォルニア大学バークレー校教授

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どんな組み合わせでも何もしないよりはまし

問題が発生するのは、公開市場操作や中央銀行が市場秩序を保証するだけでは不十分なことがわかったときである。いつ、どんな状況の下で、どんな順序で政府がこの二つの政策を取るべきかで経済学者の意見は分かれている。

政府は債券を売却して通貨の回転速度を高めるよう努力し、それによって短期金利を引き上げるべきなのだろうか。あるいは、歳出の前倒しや拡大で失業者を直接あるいは間接的に雇用すべきなのだろうか。金融機関の債務や資産を明示的に保証すべきなのだろうか。長期的な価値から見て割安だと思われる資産、あるいは投資家が投資を渋っているような資産を割高なプレミアム付きでも買い上げるべきなのだろうか。政府は、銀行の資本を再構築したり、国有化したりすべきなのだろうか。公開市場操作によって流動性を限度額まで注入した後でも通貨を印刷し続けるべきなのだろうか。

3カ月前、私はこうした問題に関して大きく意見が割れているが、確かなことが二つある、と書いた。まず政府が、いつ、どんな状況の下で、どんな順位でこうした政策を発動すべきか、私たちは十分に理解していないということである。

もう一つは、こうした政策の組み合わせが、たとえ混乱し、危険なものであっても、何もしないよりはましだということだ。大恐慌のときに先進5カ国すべてが通貨、財政、金融の危険に満ちた政策の組み合わせを行った。各国が独自のニューディール政策を実施するとすぐに事態は改善した。

日英は1931年に独自のニューディール政策を始め、ドイツとアメリカは33年、フランスは36年にやっと始めた。日英が最初に大恐慌から急速に回復に向かい、ドイツとアメリカがかなり遅れて続き、フランスが最後となった。

私がこの経験から導き出した結論は、金融の量的緩和、銀行保証、資本再編成、国有化、直接的な歳出拡大と国債発行といった可能な政策の組み合わせを、すべて試みるべきであるということだ。そして景気回復のために、迅速かつ大規模に行動することである。しかし、年内にアメリカ政府が再び財政刺激策を講じる可能性や、「問題資産救済プログラム」よりもさらに大規模に金融システムに介入するために通貨を供給する可能性はゼロだという。

2010年になってからどんな政策が適切かを判断する可能性は80%だという。しかし、逆にそれは、年内に政策が発動される可能性が20%あることを意味している。アメリカ政府は主要国の中で最も意欲的で、最善の行動を取っている国のはずである。

Brad Delong
1960年生まれ。ハーバード大学で経済学博士号を取得。93~95年に財務副次官補として93年度予算、GATTウルグアイ・ラウンド、医療制度改革に携わった。97年から現職。政治・経済のブログ「Grasping Reality with Both Hands」でも有名。

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