ヒット車連発のマツダ、「外部要因」に不安 2015年の国内販売は、8社の中で唯一の増加

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為替とエアバッグのリコール費用はいずれも外部要因で、本業の自動車販売そのものは絶好調だ。第3四半期までの累計グローバル販売は114万5000台と前年比14%増で過去最高を更新。資源安に伴う新興国経済の減速もあり、世界経済はまだらもようだが、マツダはロシアを除くほぼ全ての地域で販売を伸ばしている。

国内は全体市場が低迷する中、販売台数は第3四半期までの累計で前年比15%増の16万3000台と大躍進し、シェアは0.9ポイント増の4.7%まで高まった。2015年暦年(1~12月)で見ると、マツダの販売台数は前年比9.4%増の24万5437台となり、国内主要自動車メーカー8社の中で唯一販売台数を伸ばした。

グローバルでも好調だ。北米は前年比8%増。このうちメキシコは対前年で37%も増えた。欧州は前年比9%増、中国は13%増だった。

新世代商品群6車種の1つ、コンパクトクロスオーバーの「CX-3」

好調な販売を支えるのは、2015年に発売したコンパクトクロスオーバーの「CX-3」や一昨年刷新したコンパクトカーの「デミオ」だ。いずれも、SUV(スポーツ多目的車)の「CX-5」(2012年発売)から始まった新世代商品群を構成する車種で、環境と走行性能を高めた最新鋭の「スカイアクティブエンジン」を搭載し、マツダのデザインテーマである「魂動(こどう)」を採用している。

高収益の「新世代」商品が業績を牽引

新世代商品群は2015年に10年ぶりに刷新したスポーツカーの「ロードスター」で6車種全てが揃い、新車販売に占める比率は今年度末に85 %以上を達成する見通しだ。この6車種は一括で企画し、部品の共用化を進めたことで開発や製造のコストが低い上、極力値引きをしない「正価販売」にこだわっているため、収益性も高い。

マツダはリーマンショックに見舞われた2008年度から4期連続で最終赤字を計上。どん底から這い上がるため、開発や生産領域で大胆な構造改革を行い、新世代商品群の成功に結びつけた。

足元で収益の伸びが鈍ったものの、第3四半期までに累計の営業利益は前年比14%増の1734億円と過去最高を記録。通期に関しても、販売台数は2期連続、営業利益は3期連続で過去最高を更新する見通しだ。

第4四半期も為替影響やリコール費用などマイナス材料はあるが、藤本執行役員は「通期の営業利益2300億円の達成に向け、コスト削減や販売増の取り組みでカバーしていきたい」と意欲を見せる。

来2017年3月期からは新しい中期経営計画に移行し、台数と利益の両面で本格成長を目指すマツダ。完全復活を果たし、成長の新ステージに円滑に入ることができるか、現中期経営計画の最終年度である今期の着地点に注目が集まる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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