「フリーゲージ車」は新幹線以外にも使える! トラブル発生の原因究明し、開発継続を
一方で(2)の方は少々厄介だ。この部分だが、回転する車軸の外側に車輪を含むリング状の軸が「はめ込んで」あって、その2つは比較的長い面で接触しているという構造になっている。
どうして車軸にリング状の軸がはめ込まれているのかというと、外側のリング状の軸は「軌間変更」の際にヨコに動くからだ。
ちなみに、この2つの部品は位置関係が動くからといって、ここでは間に「ベアリング」は入っていない。間にあるのは潤滑油だけだ。というのは、実際の走行時には両者は「ロック」されて一緒に動く一方で、ロックが外されて両者がスライドして別に動くのは軌間変更時だけだからだ。
その軌間変更時には、ヨコ方向には固定されている車軸に対して車輪を含むリング状の外側は約1分をかけて広がったり、狭まったりという動作をする。その「こすれる部分」に摩耗や傷が見つかったというのである。
傷ができていたということは、何か金属部分が欠けて潤滑油の中で部品を傷つけたか、何らかの理由で潤滑油が減ってしまって「こすれ」たことが想定されている。国交省の資料によれば、車軸の「たわみ」で二重になっている車軸の接触面が異常となったり、潤滑油膜が均一でなかったりという現象が示唆されている。
勿論、走行時には両者はロックされて一緒に回転する構造だから、走行中の事故につながるような不具合ではない。発煙トラブルに発展する可能性も少ない。だが、軌間変更車の「コア技術」という部分には違いないし、「軌間変更時の摩擦が大きくなりすぎて異常になる」危険性は否定できず、最悪の場合は、軌間変更中の立ち往生ということにもなりかねない。
走行中の大事故には直結しない
だが、これも20世紀には世界をリードしていた日本の機械工学をもってすれば、困難な問題とは言えない。部品の形状と材質、そして潤滑油の品質と油漏れの防止といったトライ・アンド・エラーを繰り返していけば、最適解はあるはずだ。
繰り返しになるが、(1)も(2)も軌間変更のコアとなる部分ではあるが、どちらも新幹線区間での高速走行時あるいは在来線走行時にはロックされる部分であり、大事故になる危険には直結しない性格の問題である。
そうは言っても、予算や開発期間に制約のある中では、いくら機械工学的には「それほど複雑な問題ではない」にしても、現状としては例えば2022年の実用化というスケジュールを想定して、これに間に合わせるというのは非現実的、今回の評価委員会における議論については、そのように受け止めざるを得ない。
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