「VAIOフォンの失敗は、私の責任だ」 日本通信・三田聖二会長が公の場で語った

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――そもそも、VAIOフォン戦略とは何だったのか。

VAIOフォンの発表当時、(どの通信会社の通信網でも利用できる)SIMフリーの良い端末が出ていなかった。われわれは、法人が一番評価するブランドがVAIOだと思っていた。

VAIOは今でもグローバルで力があるブランドで、しかも消費者の認知度も高い。そこで、法人向けでも、消費者向けでもブランド効果があるVAIOを使えばよいと判断した。

 ――どういった経緯でVAIOフォンを開発することになったのか。

私はソニーのコンピューター事業の立ち上げに深く関わったことがある。VAIO社とは、ソニーから独立した後、「ノートパソコンだけでなく、スマホ端末を作らなければVAIOというブランドは生き残れない」という考え方で一致し、共同開発した。

――何が最大の誤算だったのか。

私の立場としておそまつだったのだが、(VAIOフォンの製造を委託した)台湾クアンタはノートパソコンの製造最大手だが、スマホを作ったことがない、ということを知らなかった。スマホの製造の難しさは、ノートパソコンの100倍。たとえば、今のスマホには基板というものがない。基板はガラスと一体化している。

しかも、(製造を委託しようと思っていた)世界2位のガラスメーカーが2014年12月に経営破綻した。それで、ほかのガラスメーカーを探さないといけなくなった。

出荷までの時間のロスが命取りに

ガラスは画面だけではなく基板なので、ゼロから中国を駆け回って、新たにメーカーと打ち合わせをして作ることになり、それで(発売が)3カ月遅れた。普通は1年かかってもできないくらいのことだが、クアンタも頑張って3カ月で出してきた。

三田会長は発売当初から、VAIOフォンについて「ブランド戦略で売っていく」と語っていた

VAIOというブランドに効果があると思っていたが、製品発表(2014年12月)から出荷まで3カ月待たせたことで、消費者向けの市場が冷えてしまった。どんなにブランド力があっても同じ事が起こる。(消費者が)ブランドで動くという効果が(3カ月遅れたことで)薄まってしまった。

VAIOフォンの製品価値はいろいろな方から評価していただき、良い製品だというのが残っているのは事実だし、消費者向け以外の市場でのブランド力は生きている。

ただ、消費者向けの製品として、消費者向けの販売チャネルで「同じ製品のようなものだけど、こっちのブランドのほうがセクシーだから買いましょう」という影響は冷えてしまった。それが利用できなくなったというのは、「私が責任を持たなくてはいけないチョンボの一つ」というふうに歴史に残るのではないかと思う。

(ちなみに、VAIO社は2月4日、自社設計のWindows10搭載スマホ「VAIO Phone Biz」を発表した。「VAIO」はソニーの登録商標で、VAIO社が分社・独立した後も、ソニーから商標を借りて使用している)

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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