経済学は難民問題をどこまで解決できるか

研究を通じて当局の場当たり的対応を正せ

私は米経済学会の会長として道徳的な義務感から、2016年の年次総会で「6000万人の難民」と題する会合を開き、著名な学者らを招待することを決めた。彼らには難民問題について、実効的な政策の提案を依頼した。難民問題は経済問題であるにもかかわらず、同学会には論文がほとんど提出されていなかったからだ。

英エセックス大とオーストラリア国立大で教鞭を執るティモシー・ハットン氏は、難民発生の主因は経済的な問題ではなく、政治的脅威と人権侵害だとする論文をまとめた。自分の生命を脅かされている人は、最も豊かな国ではなく、最も近い安全な場所に逃げるのであり、彼らを助ける道義的責任は免れないのだ。

難民が仕事を奪うとは限らない

 トルコ中央銀行のセミ・チュメン氏は、220万人のシリア人難民が流入した国境地域では仕事が奪われるどころか、逆に地域経済が活性化されてもともといる住民の雇用も増えたことを、データの面で裏付けた。他にもこうした調査や研究が行われて支持を受ければ、労働力流入を歓迎する国家が出てくるかもしれない。

米ジョージタウン大のスーザン・F・マーティン氏は難民の手続きの恣意性について詳しく解説。米コロンビア大のジェフリー・サックス氏は難民管理の新システムに関して、極めて有益な人材だけでなく、スキルの低い絶望的な移民も受け入れるべきだと主張した。

 現在の場当たり的な対応では、もはや難民は救えない。経済学者も難民問題について、どんな政策が効果的かを検証すべきだろう。

 (週刊東洋経済2月6日号)

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