「最強ホッチキス」で挑むマックスの欧米攻略作戦、新「規格」引っ提げ成熟市場突破を狙う

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10号の奇跡再現なるか 「デファクト」を獲れ

新針は「11号」と命名。「バイモ11」の「11」は新規格の誕生宣言だ。懸念された流通側の抵抗も、担当者に手に取って試してもらったところ、楽々クリア。昨年9月に発売すると店頭での試用キャンペーンが奏功、計画の2倍の初速を示した。「サプライズを体験してもらえれば必ず売れると思っていた」と佐々木課長。3‐10ミリ針以来37年ぶりの新針は、技術とシェアを併せ持つ首位だからこそ挑めるハードルだった。

実際、「40枚を片手で」のインパクトは強く、バイモはグッドデザイン賞や日本ユニバーサルデザイン研究機構の認証を獲得。部署共用の中型卓上機の置き場所まで足を運ばずに済む効率性や、中型機(1400~3000円)に比べ実質的には割安な点も評価され、一括購入や標準品に採用する官庁も出始めている。

がぜん期待は高まる。10号機の累計生産台数は年内にも4億台に達し、当然国内は飽和状態だが、仮に「共用からパーソナルへ」というバイモのコンセプトが当たれば、「1人1台以上」という10号機の“奇跡”を再現できるかもしれない。三井田孝嗣社長も「(既存機種からの)置き換えを狙っている」と明言する。バイモは本体9件、針1件の特許を申請済み。競合他社が類似品を作るのは事実上不可能とみられる。

期待の的は本体だけではない。ブレークした際の利益貢献度が高いのは、むしろ11号針だ。10号針1箱(1000本)の定価90円に対し、11号針は110円。この差が収益にどれだけ貢献するかは、マックスの事業内容を見るとわかりやすい。同社の事業は、オフィス機器(ホッチキスや複写機内蔵用オートステープラー〈自動綴じ機〉と針が主体)と、インダストリアル機器(国内首位のくぎ打ち機や住宅設備など)が2本柱。売上高はインダストリアル機器が6割強を占めるが、営業利益ではオフィス機器が圧倒的。ホッチキス針の利益率が非常に高いためだ。

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