国民の空気が読めない福田首相に残された道は
一年前、青木幹雄・元官房長官は「参院選で与党の過半数割れが起これば、自民党も政権も死に体となる」と繰り返し警告していたが、そのとおり福田政権はいまや「死に体」である。何をやってもうまくいかない。だが、無策ならこうなるのは最初から判っていたことだ。ねじれは昨夏の参院選で国民が下した判断なのだから、それを承知で政権を担った福田康夫首相には、当初から選択肢は3つしかなかった。
第1は、「衆議院の3分の2」も、与党の座も失うのを覚悟の上で早期に解散・総選挙を行う。第2は、法案や政策を与党と霞が関という政権のインナーサークルだけで決めるという従来型のシステムと決別し、すべてを野党との合意形成に委ねる。野党案丸呑みとなる可能性が高いが、容認する。第3は、協調姿勢や野党抱きつきのポーズを取りながら、与党と霞が関の主張をなんとか押し通す。
与党と霞が関の支持を最重視する福田首相は第3の道を歩んだが、もともと「死に体」となるリスクが一番大きい選択肢であった。なぜなら、与党や霞が関とは裏腹に、「インナーサークルで決めるのはやめろ」というのが参院選で示された民意だったからだ。国民は第1あるいは第2の道を望んでいると認めざるを得なかったはずだ。
安倍晋三・前首相の辞任は、体調悪化に加えて、与党と霞が関の空気が読めなかったのが原因といわれた。福田首相は与党と霞が関の空気は読めるが、国民の空気が読めなかった。道路財源問題でも、ぎりぎりの3月27日、「鬼が笑う」と言われそうな案を出してきた。第3の道の破綻が明白となったいま、「死に体」首相の選択肢は、どう転んでも最後は第1か第2の道しかない。
4月危機が囁かれるいま、向こう1ヵ月で清水の舞台から飛び降りる腹がくくれるかどうか。飛び降りるよりも放り投げ退陣を選ぶ可能性も否定できない。
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