現金下取りセールが好調、ヨーカ堂が作り出した「買うきっかけ」
イトーヨーカ堂の青木繁忠販売促進部長は、現場から届いた数字に驚きを隠せなかった。「回を追うごとに反響が増していく。こんなセールはこれまでなかった」。
ヨーカ堂の「下取りセール」が好調だ。衣料や住関連品3000円買い上げごとに、客が持ち込んだ対象品を1点500円で下取りする(第2弾までは5000円買い上げごとに1000円で下取り)。下取り点数は回を追うごとに増え、3月末実施した第6弾で100万点に達した。単純計算すれば、第6弾のセールで、下取りによって30億円超の増収効果があったことになる。
発端は、昨年12月中旬に行われた営業会議だった。鈴木敏文会長の下に集められた営業部のメンバーは、年末・年始セールの打ち出し方を議論していた。百貨店より早く、苦戦が続く衣料品でセールを打てないか。普段は即断即決の鈴木会長も考え込んでいたという。沈黙の後、目を見開いた鈴木会長はこう発した--。「下取りしかない」。
現金買い取りで使い道を委ねる
セール当日、店舗で客を待ち構えていた青木部長が目にしたのは、カシミヤのコートやイタリア製のハンドバックなどを次々と持ち込む女性の姿だった。履いてきた靴を脱ぎ、新たに買う顧客も。「次の下取りはいつやるのか」。セールが終わるたびに、客の問い合わせが相次いだ。
実は商品の下取りを行うには古物商の免許がいる。ヨーカ堂はすでに持っていた衣料品に加え、住関連品でも免許を取得。客の要望に応じて、下取り対象を増やしていった。