《検証・民主党》医療・介護・福祉--総額20兆円近い公約は暗礁に乗り上げる恐れも
「国民の生活が第一」をマニフェスト(政権公約)に掲げてきた民主党は、有権者の関心が高い社会保障政策に関しても、大規模な拡充の方針を打ち出している。
代表的な公約を挙げると、15歳までのすべての子どもを対象とした「子ども手当の創設」(所要財源5兆3000億円)、「主要先進国並みに医療費を大幅拡充」(政権獲得の初年度に公費1兆9000億円を投入。4年目までに数兆円をかけて主要先進国並みに医療費を引き上げ)、「介護労働者賃金の10%引き上げ」(所要財源4100億円)などだ。
また、「後期高齢者医療制度の廃止」「社会保険病院の存続」「障害者自立支援法の抜本的改正」など、小泉構造改革の負の遺産の一掃にも力を入れるとしている。
これら一連の社会保障政策が実現すれば、国民の安心感は飛躍的に高まり、わが国は欧州に比肩する福祉国家に変貌する可能性が高い。問題は、公約の実現可能性だ。
積み上がる大型公約 財源は無駄遣い根絶
民主党は社会保障拡充に関するトータルの財源規模を明示していないが、子ども手当創設と主要先進国並みへの医療費拡充だけでも、優に10兆円を上回る規模になる。このほか、消費税収に基づいた「最低保障年金の創設」(所要財源5兆8000億円)や、保育や学童保育、子育て支援策などを積み上げていった場合、必要な財源規模は20兆円近くになる可能性が高い。
その一方で、民主党は財源確保の手だてについて、説得力ある方策を示していない。消費税率は政権獲得後の4年間にわたって据え置くとし、所得税や社会保険料の引き上げの有無については、方針を明らかにしていない。政策の実現に必要な財源は、歳出の無駄遣い根絶や国家公務員人件費の削減、租税特別措置の見直しなどで捻出するという。
だが、基幹的な税や社会保険料の引き上げなしに、多額の支出を伴う政策を実現することは不可能に近い。その理由を、財政の現状分析を基に明らかにしてみたい。