スタッフサービスに続く台風の目はどこか
リクルートが一般派遣大手を買収。外資の野望も明らかとなる中、グッドウィルにも祖業売却説が浮上。(『週刊東洋経済』1月12日号より)
業界再編「最終章」の幕が上がった。広告・総合人材サービスのリクルートは、一般人材派遣業の最大手、スタッフサービス・ホールディングスを買収した。創業者である岡野保次郎会長(当時)から8割の株式を買い取って子会社化。人材派遣部門の売上高は5000億円を超え、業界トップに躍り出た。
この買収、業界では意外感を持って受け止められている。一つが買収価格だ。「(報道される)1700億円は高すぎ。適正価格は半額」と同業者は口をそろえる。スタッフ社は非上場だが、上場大手のテンプスタッフの時価総額は750億円前後、パソナグループも460億円前後にとどまる。売上高こそ3000億円強と一頭地を抜くが、直近の経常利益は70億円程度。テンプ(111億円)、パソナ(88億円)には届かない。
社会保険の未加入などコンプライアンス問題も残る。数年前には過酷なノルマなどが原因で幹部が自殺。賃金不払い残業の疑いで書類送検され、派遣許可取り消しの寸前まで追い込まれた。リクルートの中村恒一専務執行役員は「買収価格は適正。社保加入も低い水準ではない」と語るが、“社風の違い”を理由に当面は統合を見合わせるなど、融合は容易ではなさそうだ。
日雇い派遣狙う外資
もう一つの意外感は国内同業による買収という点だ。当初、岡野氏は国内勢に売らない意向を示したとされる。米マンパワーは、日本法人の頭越しに米国本社が乗り出すなど獲得に本気だった。ただ、今後も外資の攻勢は予想される。マンパワーと並び日本で先行するスイスのアデコに続き、蘭ランスタッドや米ケリーサービスなどもチャンスを虎視眈々と狙っている。
そんな中で格好の“出物”となるかもしれないのがグッドウィル・グループだ。同社は日雇い派遣部門で違法行為を繰り返していたため、近く当局から最長4カ月の事業停止命令を受ける見通し。製造請負最大手のクリスタル買収で、同社における日雇い派遣部門は事業構成比が約2割に低下。介護部門のコムスンに続いての厳しい行政処分で代表権も返上した折口雅博会長は「買収したプレミア社(旧クリスタル)に集中したい」と漏らしているという。“処分価格”で祖業の日雇い部門を売却する可能性もある。
(書き手:風間直樹)
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