ファンド提案に対抗か レナウンが経営陣刷新
急転直下の社長交代劇--。経営再建中の大手アパレルメーカー、レナウンは15日、予定していた決算発表の時間帯を急きょずらし、経営陣の刷新を発表した。中村実社長(58)を含む5人の取締役は一斉退陣。新社長には北畑稔経営企画部長(47)を起用し、40代の執行役員2人を取締役に抜擢するなど経営体制の若返りを図る。
「62ブランドのうち、赤字の16ブランド撤退など、構造改革の土台づくりはほぼ終わった。今期は営業利益トントンまで回復する」
中村社長は会見でそう強調したが、就任からわずか1年での退任。そのドタバタぶりはレナウンの苦境を象徴している。主力の百貨店向け婦人服は業績不振が続き、15日に発表した2009年2月期決算は3期連続赤字。早期退職制実施で約3割の人員削減にも追い込まれた。
そのレナウン経営陣の最大の懸案が、筆頭株主のネオラインキャピタルが4月1日に突きつけた株主提案だ。ネオラインはもともとライブドアグループの一員で、中堅商工ローンのイッコーなどを傘下に抱える消費者・事業金融会社。同社は現経営陣の続投を認めつつ、藤澤信義社長など3名を取締役に選任する案を提示した。ライブドア時代から持つノウハウをネット通販などに生かし、経営再建につなげる方針だ。
今回の人事案について、レナウン側はネオラインへの対抗策ではないとする。だが新社長候補の北畑氏が「中村社長から4月6日に打診された」というように、現経営陣が主導権を確保するための“苦肉の策”という見方もできる。
今後のヤマ場は5月28日に開催される株主総会だ。ネオラインは発行済み株式の約25%を所有。レナウン、ネオライン両社とも委任状争いはしない方針で、メインバンクの三井住友銀行なども現段階では静観の構え。が、浮動株の行方次第では新経営陣の人事案が否決されるなど波乱含みの展開も予想される。
失墜したブランド再生を託された北畑氏は、「コアブランドのリニューアルを推進する」と意欲を示した。経営権をめぐる審判が下るまで1カ月。これまで幾度も市場の期待を裏切ってきたレナウンは、今度こそ“再生”への道に進めるのか。
(福井 純 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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