僕の日銀の後輩が、ある小さな大学の理事長をやっていますが、「お前さんのところの大学は、奨学金の貸与がこれだけあるぞ。これが全部抜けたらどうなる?」と聞いてみたところ、「そんなことになったら、すぐ潰れてしまいます」と言っていましたよ。
大学の経営者に、私どもはそれを口を酸っぱくして言っています。あらゆる大学関係の集まりに、時間があれば私が直接出て行って、奨学金問題は皆さんの問題だとお伝えして、学校ごとの貸与額や延滞率を、各大学の理事長さんや学長さんに渡しているんです。
――延滞率がわかっているということは、奨学金を使って教育をしたけれど、社会に出てリターンが取れなかった学生の割合が高い大学も、わかるということですよね。
そのとおり。実は、貸与を受けている学生が多いところほど、延滞率も高かったりする。奨学金の貸与を受けて、それを返還するということは、社会人のイロハ。教育という観点もあると、僕は思うんですよね。
奨学金延滞率の大学別データを公開する
――そうした数字を見ても、大学関係者に危機感はあまり感じられない?
大学側が危機感を認識してくださっているならば、われわれはまだ助かる気がする。ところが、延滞の状況を伝えると「こんなもの初めて見た」って感じなのですよ。学校経営のど真ん中の問題なのに。
――大学別の延滞率は近々、日本学生支援機構からも公表される予定になっているということですね。
われわれは独立行政法人ですから、中期目標というものを与えられています。文部科学省の評価委員会によって、第三期中期計画の中で定められているんですよ。平成28(2016)年度の夏頃以降に公表するということになっています。
――ある意味、教育投資のROI(投資に対するリターン)のワーストランキングが発表されることになる。
最初の段階では、各大学は「なんでそんなことをやるんだ」と文句が出てしまうかもしれないけど、大学が危機感を持って、もっと社会に通用する教育をサービスとして提供する、という動機づけになりえるでしょう。
――実態として、学生をただ集めて、教育は適当にやっているのではないかという大学もあると思いますか。
それについて直接のコメントはできませんが、高専の延滞率がいちばん低いんです。まさに高専の学生たちは専門教育をしっかり受けている。だから、社会からのニーズが高いのです。つまり、そういうことなんです。
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