静かな暴落が意味する「株式市場の終わり」 「セリングクライマックス」なき反発の怖さ

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「暴落は2回来る」が私のバブル理論で、このセオリーでいうと、2015年8月と2016年1月が1回目と2回目となるのか、それとも、2回目の下落のこれは前半に過ぎないのか、見極めが難しい。欲張ると逃げるのが難しくなる。2回目の可能性があれば、逃げておくのが安全策だ。

さて、ポイントを整理しよう。今回の下落はパニック売りを伴わず淡々と直線的に下がってきている。これは、仕掛けても誰も反応しない、仕掛け側の自作自演の割合が高すぎて、売り仕掛けではそれほど儲けられず、盛り上がらない、だから、このままあっさりと仕掛け側が手仕舞う、という解釈がひとつ。

もうひとつの解釈は、200ドルの下げを400ドルにしているのは仕掛けだが、200ドルの下げは実需の下げで、オイルマネーが売り、ジャンク債で行き詰まったファンドが売り、資源関連通貨、関連株でやられた投資家が売れば、彼らが静かに売ったとしても下がってしまう、というものだ。

下落の大きさに比して市場が静かすぎる理由

静かな暴落継続は恐怖感を伴う。なぜなら、本当の売りだからだ。個人的には、こちらのシナリオだと考えているし、多くの黙っているマーケット筋もこれを恐れているが、意外と、派手で下手な仕掛けの部分も多いと思っている。下落の大きさに比してマーケットは静かすぎるのだ。恐怖に凍り付いた市場を表しているのか、リーマンショック以後、上場株投資などばかばかしくてまともな投資家はやらなくなったからなのか、どちらかなのだが、真実は両方であると考える。

上場株市場というのは大分前に終わっていたという指摘があり、学問的にも裏付けられている。この15年、とりわけリーマンショック後は、乱高下というリスクはトレーダーにとってはチャンスを意味し、価格変動リスクを狙って、変動の大きい株ほど割高となり、大手の投資家(トレーダー)はそれを好んで買っているという分析がある。

リーマンショック前と違い、投資家層は薄くなっている。そのため、取引も一方的、トレーダー的な売買の仕掛けに脆弱と言うよりは、その流れに流されるままになっており、むしろ仕掛け側としても儲ける機会が減っていることを意味する。そう考えると、今後、株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない。私はそう考えている。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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