「けんせつ小町」先輩たちはこんなに苦労した 男社会で働くためにやってきたこと

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西岡さんにとって、もちろん初めての経験。自信を持ち始め、会社からも信頼されて現場に来たのに、ただ女であるということだけで怒鳴られてしまった。周りにいた清水建設の人たちからは、取引先のトップをこれ以上怒らせないように「(お客様が外せといってるんだから)西岡、引っ込め」と言われ、西岡さんは一人、現場事務所に戻った。

「ただただ、悔しかったですね。辞めてやると思いました。建設現場に女がいちゃだめなのか、ここは土俵かよって、怒りもこみ上げました」

1本の電話に救われた

この調査のためには専門の資格(コンクリート診断士)が必要だった。その現場に2人しかいない有資格者の1人が西岡さんだったにもかかわらず、こんなことになってしまったのは、女だからという理由なのか。 しかも、作業の手間が2倍かかることになるのに、私はどうしたらいいのかと心は揺れ動いた。女だから何もできないのかという焦燥感に襲われた。そのとき、思いもしなかった電話が入った。

「普段はほとんど話したことがない技術本部長から、携帯に電話がかかってきました。『お前はどうしたい?その場に居たくないなら、すぐに本社に戻って別の業務についてくれ。現場に残って(報告書の作成とか、現場への指示とか)お前にしかできない仕事をしてもらってもかまわない』と。結局、私は現場事務所に残って報告書を作成することにしました」

技術本部長からの1本の電話に救われた。少なくとも会社は私のことを認めてくれているという思いが伝わった。あのとき、「今すぐ本社に戻れ」と言われたら、西岡さんは会社を辞めていたと思うと振り返る。

「けんせつ小町」の採用拡大に取り組んでいる建設業界。男性でさえ工事現場で働くことを嫌がる風潮の中で、ほかの業界とは違う女性の活用のための視点が求められている。結婚、出産を機に仕事を辞める女性は少なくない。工事現場での仕事となると、体力的にも辛い。女性が仕事を続けていくためには、まだ改善しなければならないことが多い。

西岡さんが経験した女性に対する「偏見」は少なくなりつつあるようだが、発注者側の理解も必要だろう。西岡さんは現在、ダイバーシティ推進室長として後輩たちの悩みも聞きながら、さまざまな課題に取り組んでいる。

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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