イオン、V字回復にも厳しい声が上がる理由 総合スーパーは閉店を封印、改装は道半ば

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一方、既存店売上高は確実に改善していることを強調。積極的な改装など活性化による効果もあり、7~10月は4カ月連続で前年を上回り、11月の暖冬影響を除けば、12月以降も回復傾向にあるという。

イオンがGMS改革で行っているのは“脱総合化”だ。地域の客層や競合状況に応じて店舗の改装を実施しており、「イオンスタイルストア」という店舗名で次々にオープンしている。たとえば、2015年12月にオープンした「イオンスタイル御嶽山駅前」(東京都大田区)は、所得水準が比較的高い世帯が多く住む地域特性を踏まえ、これまでの画一的な品ぞろえを改めて地域のニーズが高い高級食材やワインを多くそろえるなど工夫。衣料品売り場を大きく減らす一方、食品売り場中心の店舗に変えた。

全国に約350店を展開する、イオン傘下のイオンリテールではこうした業態転換を2014年から進めている。これまで本社が握っていた仕入れ権限を各店舗に委譲し、本部主導の画一的な品ぞろえではなく、地域密着による店舗づくりで地元スーパーなどに対抗していく考えだ。

GMS改革を担当するイオンリテールの岡崎双一社長は「店舗改装はかなり精度が高くなっている。来期の改装計画は加速する形でやっていく」と鼻息が荒い。改装店舗の売上高は改装前より1割程度高くなっているケースもあり、客からの評価も上々だ。

ただ、市場関係者の反応は厳しい。多くのアナリスト予想に届かず、GMSを主因に想定を下回る決算となった。決算発表後の翌週明けの株価は大幅続落した。大手国内証券アナリストは「GMS改革の方向性は正しいが、道半ばだ。GMS事業は赤字が膨らんでおり、固定費もまだ高い」と指摘する。そのうえで、「西友は米ウォルマート傘下になったことで、一気にリストラをやって今では大きく改善した。イオンもそれだけの規模感とスピードが必要だ」と話す。

イオンは3~11月期の連結決算が大きく改善しているが、グループ再編に伴う新規連結子会社の寄与分が200億円以上と大きかったほか、前期の営業利益が低水準だった。ハードルが低くなっていたため、大幅な増収増益に見えている面も否めない。

苦戦のGMSは、閉店ではなく改装で対応

イオンスタイルへの業態転換もこれからが本番で真価を問われる。改装後の店舗は、店員を多く配置し、これまでのセルフサービスではなく、接客を強化しながら購買意欲を高めていくスタイルだ。その中で現在は人材不足が露呈しており、岡崎氏も「本当はもっと商品を並べたいが、人材不足や採用難がある。新店舗では昔のセルフとは違うやり方をしようとしているので、かなりの人手がかかる」と漏らす。

GMSをめぐっては、大幅赤字が続くセブン&アイグループのイトーヨーカ堂が40店の大量閉鎖を2015年秋に発表。2016年に入って戸井和久社長が突如辞任し、前任の亀井淳顧問が社長に返り咲く異例の人事異動も出た。2016年9月にファミリーマートとの経営統合を予定する、愛知県地盤のユニーグループ・ホールディングスも数十店規模のGMS閉鎖を検討するなど、動きが激しい。

他方、イオンは現在、GMSの閉鎖を検討していない。岡崎氏は「私どものGMS改革は、閉店よりも大変なことをやっている。第3四半期は芳しくなかったが、今戻っているので改革は間違っていないと思っている」と力を込める。はたしてイオンはGMSで真の復活を遂げることができるか。注目が集まっている。

 

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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