旅行業界で働く人々のホンネ--見るとやるでは大違い、なかなかツライ裏事情《特集・日本人の旅》
格安バスツアーは依然人気だけど、今の50~60代の人たちは「定年になったらいずれ旅を」と思ってた人たち。日程がガッチリ組まれて自由がなくても、昔行けなかった分を楽しんでるんじゃないですかね。でも、はたして今の40代が定年になったとき、同じようにバス旅行の人気が続くかというと、これはまったくわからないと思う。この間、バスの運転手さんも同じことを話してました。
●旅行用品・おみやげ販売会社役員(50代)
海外旅行のコンパクト化が進み、旅程も周遊型からワンスポット型に変わったことで、大型のスーツケースがめっきり売れなくなりましたね。海外出張が減った影響か、昨年11月くらいからスーツケースの売り上げはさらに極端に落ちてます。
お土産についても、海外旅行自体がもう自慢でも何でもなくなったから、近所だの職場だのにお土産を配らない。特に若い人はネットで予約して、何も言わずに休み取って行っちゃうでしょ。昔はチョコ6箱セットとか多めに買ったもんだけど、今は余分には買わない。客単価は20年前の3万5000円から今では2万円切りますね。ハネムーンのお客さんは今も比較的買うけどね。あれはお餞別返さないといけないから。
燃油サーチャージが下がれば、海外旅行も多少持ち直すかもしれないっていうけど、お土産業界まで回ってくるかどうかは疑問ですよ。安く上がった分は自分のために使う、というのが今の考え方ですもん。
●海外旅行添乗員(派遣、40代)
以前は、海外旅行の添乗が平均して月2本、繁忙期は2カ月に5本とかだったのが、昨年11月くらいから月1本とか2カ月に3本とかになりました。僕たち添乗員は日給制で、海外なら1日1万~2万円台半ばの間、国内だとキャリアがあっても1日1万円台前半で頭打ちです。
仕事は、出発3日前の打ち合わせからスタート。そのとき名簿をもらって参加者全員に電話確認します。帰国後もグタッとしてるヒマはなし。3日以内に現金の精算をしたり、報告書書いたり。こうしたツアー前後の作業は時間給で、トータル4000円程度。つまり、月1回、1週間の海外添乗の仕事しかないと、月収は7万4000円ほど、一握りの多くもらえる人でも18万円いかない。実際、2年前は全添乗員の平均給与が250万円くらいだった。まして新人だと日給の安い国内旅行からだから、自活は難しいですね。
パッケージプランの価格競争のツケは添乗員にも回ってきています。コスト削減で現地ガイドを雇わない場合など、全員付いてきてるか僕たちが安全確認しつつ、初めて行く場所でも先導して歩いて案内しなきゃいけない。緊張の連続を強いられるうえに、勝手によそ見して列からはぐれても、ツアー後のアンケートには「迷子にさせられた」と書かれたりして、精神的にキツイです。