潜水艦では、定員外の寝床は「魚雷の架台」? 知られざる潜水艦乗りの生活に迫る<後編>

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行動を終えて帰港した潜水艦の乗組員が心待ちにしている号令があります。たとえば以下のようになります。

「上陸許可、帰艦時刻、明朝0745」

「0745」は「まるななよんご」と発唱します。この後、当日の当直員を残し、乗組員は三々五々、上陸していきます。この「上陸」という用語も、潜水艦が生活の基盤であることをよく示している言葉だと思います。決して「外出」とは言わないのです。

ちなみに、水上艦では入港直後であれば「作業にかかっている者のほか、別れ。艦内閉鎖用具納め。上陸員上陸用意」という号令がかかり、さらに「上陸員整列」の号令で上陸する者は整列して、副直士官から帰艦時刻や注意事項の示達を受け、上陸していくというようになります。もっとも最近では、定係港にあるときには上陸員整列を省略しているケースもあるようです。

潜水艦に話を戻しますと、上陸員が上陸した後、適宜の時刻に当直員整列が行われ、当直士官から当直員に対して明朝までの作業の予定や注意事項が示達された後、各当直員はそれぞれ受け持ち区画に行って、定められた点検を行い、清掃を実施することになります。

海上自衛隊伝統の「五分前の精神」

翌朝、上陸していた乗組員が続々と帰艦してきます。海上自衛隊では、日本海軍からの引き継いだ伝統のひとつに「五分前の精神」というものがあります。通常、乗組員は定められた時刻より少し余裕のある時間に帰艦するのですが、たまに帰艦時刻に遅れる不心得者が現れます。

「帰艦時刻遅延」は立派な服務違反ですから、相応の処分が待っています。初めてだと、厳重注意と何日間かの上陸止めということになるのでしょう。万一、これが繰り返されるようであれば懲戒処分の対象となります。

帰艦時刻遅延の中でも、出港の日に帰艦時刻に遅れ、もし潜水艦が出港してしまったということになると、単なる帰艦時刻遅延では済まなくなります。「航発後期」と呼ばれる事案になって、より重い懲戒処分を受けることになります。

潜水艦での生活をすべて紹介するのは至難の技ですが、今回はほんの少し、垣間見てみました。もし潜水艦に興味を持つきっかけになれば幸いです。

山内 敏秀 太平洋技術監理有限責任事業組合理事首席アナリスト

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1948年、兵庫県生まれ。1970年、防衛大学校(第14期)卒業(基礎工学1専攻)。海上自衛隊入隊。1982年、海上自衛隊幹部学校指揮幕僚課程学生。1988年、潜水艦「せとしお」艦長。1996年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修了。2000年、防衛大学校国防論教育室教授。2004年海上自衛隊退官。現在は、太平洋技術監理有限責任事業組合理事(安全保障担当)、首席アナリスト。主な著書は『軍事学入門』(かや書房、共著)、『潜航』(かや書房)、『中国の海上権力』(創土社、編著)

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