「幸せ」を工学博士とお坊さんが解明しました あなたの幸福度が上がるメソッドを大公開

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前野:そうそう、信念で変わります。教育も「この学生はできる」と本当に信じたら、できるようになるという、ピグマリオン効果(※教師の期待により生徒の成績が向上する)が知られています。賛否両論ありますが。

明らかになってきた「幸せ」の構造

井上広法(いのうえこうぼう) 1979年宇都宮市生まれ。浄土宗光琳寺 副住職。佛教大学で浄土学、東京学芸大学で臨床心理学を専攻。グリーフケアの観点から「遺族における法事の心理的役割の検討」を執筆。お坊さんが答えるQ&Aサービスhasunohaを企画運営。最近は心理学、特に「ポジティブ心理学」の知見を参考に「生きるための仏教」を模索中。テレビ朝日「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」でも活躍中。

前野:心理学者はいろいろ個別に研究をするのですが、そのさまざまな研究を束ねて「全体としてはどうなのか」という研究は、幸せの分野ではあまりなされていなかったんです。ポジティブ心理学というのはありますが、必ずしもエビデンスが明確ではない面もある。

だから私たちのラボでは、科学的にその解明を試みました。先ほど出た「幸せの因子分析」ですが、日本人約1500人のアンケートからコンピューターで因子分析を行い、その結果4つの因子を洗い出しました。それが「自己実現と成長(やってみよう!)の因子」「つながりと感謝(ありがとう!)の因子」「前向きと楽観(なんとかなる!)の因子」「独立とマイペース(あなたらしく!)の因子」です。

井上:私の行っているハピネストレーニングは、「オプティミズム(楽観)」「ストレングス(強みを磨く)」「マインドフルネス(心を調える)」「コンパッション(共感、慈悲)」「グラティチュード(感謝)」の5つを幸せの要因としています。マインドフルネスを除けば先生と同じですね。

前野:われわれの4つの因子を簡単に要約すると、「やってみよう!」の因子は小さくてもいいから自分らしさを見つけ、社会の中で自分らしく生きていくようなあり方。

「ありがとう!」の因子は、人を喜ばせる、親切にする、愛情を感じ、感謝をする、人とのつながりなどの要因。それらを満たすと幸せになれるのか、幸せだとこれが満たされるのか、つまり「因果」はまだわかっていない部分もあります。私は、両方のパスがあると思っています。

「なんとかなる!」の因子は、楽観性、気持ちの切り替え、自己受容などと関連します。これは幸せになるための飛び道具のようなもので、極端に言うと、これさえあれば幸せを感じられます。

そして「あなたらしく!」の因子は、自分と他者を比較しない、自身の信念が変化しない、など“人の目を気にしすぎない”という要素です。日本人は欧米人に比べて「人の目を気にする、和を尊ぶ」という傾向がありますが、人の目を気にせずに自分らしくいられることは幸せの要素のひとつであるという結論を導きました。

井上:私が大学に入った時も、心理学はすでに理科系の学問でした。フロイトやユングは自分で選択しない限り触れることもない。当初思っていた心理学のイメージとは全然違う世界でしたね。

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