【産業天気図・半導体】08年度は「雨」から「曇り」へ、ただ急転直下の再編劇でがらっと変わりうる波乱含みの年
半導体業界の2008年度前半は「雨」、08年度後半は「曇り」を予想するが波乱含みで推移しそうだ。パソコンや携帯電話に主に使われるDRAMの在庫だぶつきがいっこうに改善せず、一般的なDRAMである「DDR2(ダブル・データ・レート・ツー) 512メガバイト 667メガヘルツ」のスポット価格は、3月8日現在で0.88ドル~1.20ドルと相変わらずの低水準で推移している。米マイクロソフトの最新OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」を当て込んで作り過ぎた流通在庫がしこっているほか、メーカー各社の増産投資や想定を超える歩留まり向上などか、市場価格の下押し要因となっている。また、DRAM世界最大手の韓国サムスン電子の投資決定機関や価格戦略を決めるマーケティング部署が不正資金疑惑で「機能不全に陥っているのではないか」とも噂されていて業界全体に先行き不透明感が広がっている。
DRAM価格の空前の安値持続の影響はDRAMメーカーはもとより同製造装置メーカー、検査装置メーカーへと波及しつつある。
国内唯一のDRAM専業メーカーであるエルピーダメモリ<6665>はDRAM価格下落による在庫評価減を主因に今08年3月期の第3四半期(07年10~12月)に89億円の営業赤字に転落。第4四半期(08年1~3月)も大幅な営業赤字が見込まれる。08年3月通期では上期の98億円の営業黒字を食いつぶし、200億円程度の営業赤字になるのではないかと「東洋経済オンライン」では見ている。来09年3月期も業績見通しは厳しく、上期は100億円程度の営業赤字、下期に持ち直しても通期50億円程度の営業黒字にとどまるだろう。
NANDフラッシュメモリも第3四半期(07年10~12月期)に価格が急落。NAND世界2位の東芝<6502>は第3四半期に営業利益計画を150億円ショート。価格急落やHD DVD撤退が打撃となり、3月19日には今08年3月期業績予想を大幅下方修正した。
DRAM用の比率が過半を超える国内最大手、世界2位の半導体製造用装置メーカー、東京エレクトロン<8035>は、豊富な受注残やFPD用製造装置の復調で今08年3月期は増益を維持するものの、来09年3月期はDRAM用製造装置の急速な受注減少で、1割超の営業減益が避けられない様相だ。
半導体用切断・研削・研磨装置の世界首位のディスコ<6146>はDRAMメーカーやNANDメーカーの後半失速で今08年3月期の営業増益幅が縮小。来09年3月期は前半の落ち込みが厳しく通期減益が避けられないだろう。
DRAM検査装置で世界最大手のアドバンテスト<6857>も苦しい。中間期に下方修正した営業利益計画を年明け後さらに下方修正。今08年3月通期の営業利益は240億円と前期比で3分の1近い水準にまで落ち込む。来09年3月期も前半は期待薄。後半の回復に期待するが今期並みの営業利益を確保するので精いっぱいだろう。
DRAM業界では「6月までに大型再編があるのではないか」という噂がまことしやかに囁かれている。再編の当事者になれば業績を大きく伸ばす可能性がある一方、再編の傍観者となれば、割を食うことになりかねない。そういった意味で、08年度は「前半雨・後半曇り」が基調だが、急転直下の再編劇によってがらっと変わりうる波乱含みの年度となりそうだ。
【山田 雄一郎記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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