スルガ問題どこ吹く風「マンション投資」の熱狂 競争が激化する一方で、融資環境には異変も

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サラリーマン世帯にも広がるマンション投資。巷には投資の指南本があふれ返る(記者撮影)

JR山手線「五反田駅」より徒歩5分の場所に建つマンション。2月8日、このマンションの総戸数47戸が投資家向けに販売されるやいなや、ものの見事に“ソッカン”した。売り出した即日に完売したという意味だ。

販売したのは投資用マンションの開発・販売で大手のFJネクスト。同社の伊藤賢志・経営企画室係長は「マーケットは非常に好調だ」と自信を見せる。

1棟苦戦でも区分は人気

不正融資に書類の改ざんなど、昨年は次から次へと悪材料が飛び出した不動産投資。いつしか金融機関は不動産に対して疑いの眼差しを向け、融資に及び腰になっている。3月28日には金融庁が全国の金融機関に対して行った投資用不動産向け融資のアンケート調査結果が公表された。それによれば、2018年度の投資用不動産に対する新規融資実行額は、前年度と比較して目減りした。実際、アパート建設業者の関係者は「融資が下りずに物件の引き渡しが滞っている」と話す。

そんな苦しい不動産業界にあって、一人気を吐くのが区分(所有)マンションだ。マンションの1室のみを所有する形態で、新築アパート1棟なら土地と併せて1億円、マンションなら数億円にも達する物件価格に対し、2000万~3000万円の区分マンションは融資のハードルが相対的に低い。「1棟モノへの融資が出しづらい分、区分への融資を伸ばしたいという金融機関の意向を感じる」(区分マンション開発会社幹部)。

区分マンションの中でも特に幅を利かせるのが、専有面積が20~25㎡程度のワンルームタイプだ。東証1部上場のマンションデベロッパー、プロパティエージェントの岩瀬晃二取締役CFOは、「全国的に人口は減少しているが、都心部では単身世帯の流入が続く。ワンルームの需要は底堅い」と自信をのぞかせる。同社の2019年3月期決算は、投資用マンションの引き渡しが好調で過去最高益を見込む。

むろん、昨今の用地費・建築費の高騰を受け、物件価格は上昇している。東京23区のワンルームマンションの坪単価はかつて300万円台だったのが、今や400万~500万円にも達する。それでも節税目的や生命保険代わりとして購入する客は多く、不動産経済研究所によれば、2018年の首都圏での投資用の区分マンション販売戸数は7000戸超と高い水準となる見込みだ。

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