ボーイングが最新機種でも「操縦桿」を使う理由 ジェット旅客機の2大メーカーでこんなに違う

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操縦桿を使うか否か、ボーイングとエアバスで違う理由とは?(写真:Takosan/iStock)
旅行や出張でジェット旅客機に乗客として乗ったことがある人は多いでしょう。そのとき、多くの場合、2大メーカーのボーイングかエアバスの機体に乗ることになります。この2大メーカーの旅客機は、自分がお客さんとして乗る分には大きな違いを感じないかもしれませんが、パイロットの視点で見ると設計思想が大きく異なります。
エアバスの最新機種は「サイドスティック」という操縦装置を利用していますが、ボーイングは最新機種のB787でも操縦桿を採用しています。
今回は「ボーイングがいまだに最新機種でも操縦桿を使っている理由」について、『ジェット旅客機操縦完全マニュアル』を上梓した元航空機関士の中村寛治さんに説明してもらいます。

 

3次元を飛ぶ飛行機には、①補助翼(エルロン)、②昇降舵(エレベータ)、③方向舵(ラダー)の3つの舵が必要です。それらの舵面を動かすため、昔は、「ケーブルでアクチュエーター(作動装置)を制御して動かす方式」でしたが、現在は「デジタル信号に変換しワイヤ(電線)でクチュエーターを制御する方式」であるフライ・バイ・ワイヤ(FBW)が主流です。

フライ・バイ・ワイヤでは、飛行を制御するコンピュータが、他システムから取得した情報(飛行速度、飛行高度、飛行形態、エンジン・データなど)から効率的に旋回するために必要な補助翼や昇降舵などの舵角を算出して作動させます。

そのため、操縦輪を回すだけで効率よく旋回でき、操縦桿を引く操作や当て舵も必要ありません。これにより登場したのがサイドスティックです(図1)。

操縦桿とサイドスティック(図1)

フライ・バイ・ワイヤには、これ以外にも多くの利点があるため現在の主流となっていますが、なぜボーイングはフライ・バイ・ワイヤを採用しても従来型の操縦桿を残したのでしょうか?

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