ドローン、「学校」乱立であらわになった弊害 受講生と企業との間に深刻なミスマッチ

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ドローンを操縦できる人材への企業の期待は高まっているが……。写真は2018年12月、岡山県和気町で行われたドローンによる荷物配送の実証実験(写真:時事)

ドローンの操縦方法などを教えるドローンスクールが急増している。

講習内容や講習時間などが一定の要件を満たすとして、国土交通省航空局が公表している「講習団体」は、2020年4月時点で全国で735団体にのぼる。初公表した2017年の43団体からわずか3年間で17倍に急増した。

増えるドローン操縦士の需要

ドローンスクールが急増している要因は、ドローンの利用拡大によって操縦士の需要も増えるとみられていることだ。

ドローンは2010年台半ばに空撮用のホビー商品として国内でブームになった後、2017年ごろから産業分野での活用に注目が集まった。近年はインフラや構造物の点検、農薬散布や精密農業、物流、災害調査など幅広い分野での実証実験が行われ、一部では実用化も始まっている。

インプレス総合研究所によると、機体販売やドローンを活用したサービスなど、国内のドローンビジネス市場は2019年度の1409億円から2025年度には6427億円と急拡大が見込まれている。経済産業省は2022年度までに、高い安全性の確保が必要になる都市部での目視外飛行を行うことを目標に、技術開発と運航ルールなどの検討を進めている。

現在、ドローンの操縦に関する免許制度は存在せず、ドローン関連の企業や研究者、大学などでつくる「日本UAS産業振興協議会」(JUIDA)などいくつかの民間団体が、ドローンの操縦技能の独自証明書である「ドローン操縦士資格」を発行している。国土交通省は2017年4月から、一定の要件を満たすドローンスクールを「講習団体」として、またそれらに指導・監督などを行うJUIDAなどの団体を「管理団体」として公開し、講習の受講を奨励している。

講習団体が発行する操縦士資格を得ると、ドローンを飛行させるたびに必要な飛行許可・承認手続きが簡略化されるほか、企業に自分の飛行技術を証明しやすいメリットがある。2017年以前の資格取得者は趣味の空撮や映像関係の仕事を持つ人に限られていたが、現在は建設やIT、コンサルティングなど仕事として使いたい人に広がっている。

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