新型肺炎を武漢で真っ先に告発した医師の悲運 12月に警告も、当局から処罰され本人も感染

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34歳の李文亮医師は武漢市中心医院の眼科医。彼は率先して原因不明の肺炎が発生していることを周囲に注意喚起したが、そのSNSのスクリーンショットが拡散されたことで、職場や警察から事情聴取を受けた。李医師は診察の過程で自身も新型肺炎に感染、多くの同僚や両親も感染している(写真:取材対象者が財新に提供)
新型肺炎の感染が拡大した2019年末、武漢では現地の医師による注意喚起が早くから行われていた。だが当局は“デマを流布したもの”に対する処罰を発表、医師も含む8名に処分を下している。中国の独立系メディア「財新」の取材班は、内部告発者として注目を集めた李文亮医師へのインタビューを敢行している。

【2020年2月7日8時00分追記】李医師は治療を続けていましたが、2月7日未明に亡くなったため、記事末尾に経緯を追加しました。

李文亮医師は現在も武漢市中心医院の集中治療室に隔離され治療を受け続けている。生活を送るには同僚の助けが必要な状態だ。

李医師は新型コロナウイルスの感染の疑いがあるとされていたが、すぐには正確な結果が出ず、“原因不明の肺炎”という名目で治療を受けていた。2月1日午前、李医師は核酸増幅検査によって陽性という結果が出て、すでに新型コロナウイルスに感染したと診断された。

李医師は武漢市中心医院の眼科医であり、ウイルスの“ヒトからヒト”へ感染するという特性の有無がまだ不明確であった頃、職務上知り得た情報をもとに友人らに対しその危険性を伝えようと試みた。彼は“違法行為”を行いたいと思っていたわけではなかった。

本記事は『財新』の提供記事です

1カ月前の12月30日17時48分頃、李医師は約150人が参加するグループチャットにおいて「華南海鮮市場で7名がSARS(重症急性呼吸器症候群)に罹り、我々の病院の救急科に隔離されている」という情報を発信した。

同日、武漢市衛生健康委員会は『原因不明の肺炎に対する適切な治療についての緊急通知』をネット上に発表し、その中で厳格な情報報告を行うことを要求した。さらに「いかなる機関及び個人も、許可を得ずみだりに治療情報を外部に発信してはならない」と強調した。

李医師が微信(ウィーチャット)のグループにおいて行った注意喚起のスクリーンショットを、グループに参加していた1人がインターネット上に投稿した。この時、最も重要な情報である李医師の名前と職業を隠さずに投稿したのだ。

これによりそのスクリーンショットを目にした人物が李医師を見つけ出し、彼はすぐに病院の監察科による事情聴取を受け、1月3日には管轄区域の派出所に出向き“違法問題”に対する「訓戒書」に署名をした。

内部告発者となった李文亮医師

1月20日以降、新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴い、警察から不正確な情報を流布したと認定されたこの人物が、今回のアウトブレイクの最前線で戦う医療関係者の一人であったということが明らかになり、人々に認識され始めた。そしてその後、彼自身も診察を行っている際に感染し、病状の悪化により一度はICUに入った。この他、彼の多くの同僚や両親も新型コロナウイルスに感染し肺炎を発症している。

人々がウイルスの原因を探り始めると、早くから警告を行っていた人物がいたことが明るみになった。李医師はスクリーンショット上の実名により、探し出すことができる“内部告発者”となった。李医師は、当時は友人達に注意喚起をしたかっただけで、深い意味はなかった。

スクリーンショットが広まったことに憤りもあったが、「人々が公共の衛生状況に対して心配するのも理解出来る。自分にとって今重要なのは汚名を返上することではない。本当に重要なのはその真相だからだ。健全な社会に必要なのは様々な声だ」と話している。

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