音力発電って何だ!? エアバスも大注目の日本発グリーンベンチャー
3年前の技術しか世の中に出さない
慶應大学の環境情報学部が属する湘南藤沢キャンパス(SFC)は、技術ベンチャーの育成を後押しするソフト、ハード両面のインフラが整っている。環境にも恵まれた速水氏は今、後期博士課程に在籍する学生であると同時に、2006年9月に設立した株式会社音力発電の代表取締役という肩書も持つ。同社の資本金4100万円は、速水氏が銀行借り入れなどで調達した資金を全額出資したもの。社長1人、社員1人の小さなベンチャー企業だ。
「これまではおカネがなくてもできることをやってきたが、これからは実験や製品開発などに大きなおカネが必要になる」。昨年11月に開催した資本政策の合同説明会には、39社の金融機関、ベンチャーキャピタルが集まった。
こうした外部資金や国などの助成金を活用することで、音力、振動力発電の応用製品開発を加速させていく構えだ。この4月にはもう1人、社員を採用。インキュベーションの段階を卒業し、本格的な事業拡大に向けた準備が始まる。
初期の段階から複数の弁理士事務所と契約し、知財戦略に注力している点も、音力発電の大きな特徴といえる。「市場に出せば分解してまねされることも覚悟しなければならない。それを防ぐため分解してもわかりにくい構造にしているが、そもそも3世代前、つまりおよそ3年前の技術しか世の中に出さないということも決めている。技術面で圧倒的な優位性を保つためだ」。
同社の発電システムを組み込んだ機器は、大手メーカーとの共同開発により、次々と量産が始まる予定。その一つが靴底に発電装置を埋め込んだ発電靴だ。歩くだけでどんどん発電できる。これを音楽プレーヤーなどのモバイル機器の充電に使っていこうというアイデアだ。
さらにテレビやゲーム機などに用いるリモコンへの応用も間近だという。乾電池は処理の際に廃液も出るため環境への負荷が大きい。にもかかわらず、リモコンに用いられている乾電池だけで10億本もある。リモコンに必要な電力をボタン操作のときの振動で賄うことができれば、省エネ、環境へのメリットは小さくない。