社員もパートも幸せな「持たざる経営」の秘密 世界トップを走る中小企業には総務部がない

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入社翌日から製品を作れるとはいうものの、メトロールが扱う製品は1000種類以上。1年目は50種類しか作れなくても、2年目には100種類を作れる技術を身に付けてもらい、それに伴い給料も上げる。だからこそ現場のモチベーションは高い。

管理部門はいらない

「気づきシート」があるのは製造部門だけではない。全社で年間1200件以上もの提案が出される。これらの提案が決済されるのは、翌朝のミーティングだ。その場ですぐに担当者が決められ、実行に移される。提案は多岐にわたる。誰が実行に移すのか――。社員全員だ。

実はメトロールには総務部、人事部といった管理部門がない。組織図にあるのは開発、製造、営業といった付加価値を生む直接部門のみ。そのため、全社的な業務はすべての社員でシェアしてこなすという暗黙の了解がある。マーケティング担当者が人材採用もこなし、営業担当者が会社説明会を運営する。「管理部門が肥大化するとカネを生まない余計な仕事やルール・規則が増え、人間が創造性を発揮できなくなる」と松橋社長。

「直接部門の人を幸せにしたい。そのために間接部門が権限を持つ組織であってはいけない」というのは、創業者である松橋社長の父・松橋章会長が抱いていた思いでもある。創業前、大手メーカーで胃カメラの開発に携わっていた松橋会長は、技術者が報われない組織の論理に長年やるせなさを感じていた。どんなに優れた開発を行っても、管理部門の意見ばかりが尊重される組織では日の目を見ない。技術者、生産者が伸び伸びと働ける環境でなければ、自由な発想も生まれない。

松橋卓司社長

メトロールのオフィスには仕切りもなければ会議室もない。社内メールも原則禁止だ。そもそも情報共有のために会議を開いたり、社内にいながらメールで用件を伝えたりする必要がないのだ。社員は日報をブログ形式で書き、つねに共有しているし、組織自体がフラットでラインもない。オフィスでのちょっとした立ち話からでも重要な物事が決まっていく。

松橋社長はこう言う。「新しいものを生み出すには、人が持つ能力とチームワークに頼るほかない。みんながアイデアを出し、みんなで情報共有しなければいいものは作れないでしょう」。

チームワークを生み出すのは、社内の円滑なコミュニケーションだ。そのため3カ月に1回、社内でビアパーティーが開催される。週1~2回の昼食は抽選によって席を決めている。日常的な接点のない社員同士が隣同士になって会話を交わすことで、新しい気づきが生まれることが期待できる。

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