御厨:議員がよく眠っていると仰っていたけど、国務大臣は全員出席の義務がある。といっても自分に関係ない話をされたらそれは眠くなりますよね。
わざわざ全閣僚を呼びつけないで、できるだけ自分の部署で仕事して、関係がある時だけ出席するのがいちばん合理的。ただそれは国会議員が許さない。なぜなら、テレビに映っているところで自分と担当大臣だけでしょぼく議論をするのはイヤだから。全員後ろにいて聞いているぞ、というところで頑張る。野党だけでなく与党も一緒です。
木本:閣僚全員を相手にしている絵づらが必要ということなんですね。
御厨:そう! 逆にテレビが入っていない委員会は本当にダレています。
木本:なるほど。国会中継がある時は、カメラを意識しているんですね。
御厨:もちろん。だから委員会の時に野党議員はみんなフリップ持ってくるでしょう。あのフリップはカメラを向いているから、議員には見えないんです。カメラを見て国民目線で発言している。
木本:国会という劇場で演じているわけですね。
御厨:そうです、まさに劇場。見てもらっているところでのお芝居なわけ。だからあの時間さえ耐えれば、と安倍さんもじっとしている。これ自体がまた一つの演技。しかもその時間をどのくらいやれるかは議員の数で決まる。だから多ければ多いほど長い時間しゃべれる。維新の党と民主党が統一会派作ると、質問の時間も多くなる。結果、テレビに映る時間も長くなる。今はSNSがあるから、選挙区に自分が何時まで質問しますって、選挙民に全部伝えるんですよ。
木本:SNSでつぶやくんですね。ぼくらが「この特番に出ます!」って言うのと一緒や。
御厨:そう、「見てね」と。国会議員がやっていることは、舞台の上でやっていることと、きわめて似ています。
木本:へえー。
シナリオは舞台裏で決められている
御厨:だから交わされる言葉は、相手方をやっつける言葉になる。
木本:なるほど。国会で行われているのは、戦(いくさ)と一緒ですね。
御厨:閣僚は、野党の議員からしかられるというのが建て前。だから、閣僚はいかにしかられながら逃げるかということを考える。法案がその場で本当に吟味されているのかといえば、実はそうではありません。そこでひっくり返って通らないことはまずない。時々、通らないものもありますが、それは与野党の調整の場である国会対策委員会で議論されて、「この法案は寝たままにしよう」と決めた場合です。つまり吊るしてはいるけど審議に入らないとか、この法律は最後に乱闘騒ぎにして流す、ということがあらかじめ決まっているわけ。
木本:ほー、国会で怒られているのはお芝居に近い。で、裏で実際にはしっかりと話している。
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