円高ドル安が進み、2016年末は112円になる 円安?円高?円高と見るプロの論理

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――FRBの利上げペースはどう見ていますか。FOMCのドットチャートは年4回を示しています。

時間が経つにつれて、たいして利上げはできない、という見方が強まっていくだろう。2016年3月も微妙だ。FF金利先物は2.5回を織り込んでいる。私はあと2回できるかどうか、という見方だ。3月か6月にできるかどうか。時間を追う毎に難しくなるだろう。9月は大統領選挙(11月)に時期が被るので難しい。あとは2016年12月にできるのかどうか。

米国の労働市場に陰り、利上げは進まず

――アメリカの経済はそれほど強くないということですか。

現状については、ドル高の影響で製造業は厳しいが、内需向けの非製造業がよいといわれている。内需は労働市場の改善と株高による資産効果が支えてきた。

しかし、注目すべきは労働市場に少し陰りが出てきていることだ。FRBが作成している19の労働市場関連の指標から編み出す「労働市場情勢指数」(LMCI)は、プラスなら改善マイナスなら悪化というもので、景気がよいときはプラス4~5とされる。しかし、2015年に入ってからは、これが一段低下して、1月のプラス3台が最高で、あとはマイナスをつけたり、足元でも1台で推移している。

2016年は労働市場の改善度合いが鈍くなり、毎月の非農業部門就業者数の増加が20万人を超えるのは難しくなってくるだろう。2015年も10月が27万で11月分は21万人と減った。2013年も2014年もクリスマス商戦などで盛り上がる11月は10月を上回っていた。この辺りからも陰りが出ていることがうかがえる。

2016年は株価もあまり上昇が期待できない。米国の株はITバブル崩壊後、だいたい予想PER(株価収益率)18倍が上値のメドとなっており、ほぼ天井に来ている。企業業績がよくなってEPS(一株当たり利益)が上がればPERは横ばいでも株価は上がるが、企業の収益自体が2015年7~9月期は6年ぶりの前年同期比マイナスを記録した。ドル高とエネルギー価格下落が響いている。

2004年以降、利上げを続けても株価が上がり続けた、という指摘があるが、当時の株高を牽引したのはエネルギーセクター。エネルギー価格が上昇し、エネルギーセクターの株価が2倍3倍と上がっていったことが大きい。加えて、金融セクターも元気よかった。だが、今回金融規制が強化され、金融セクターも元気がない。そもそもQE3(量的緩和第3弾、資金供給の拡大)をやめた時点ですでに株価は上がらなくなっている。

労働市場の改善ペースが鈍り、株価も上がらないとなれば、頼みの消費は勢いを失ってくるとみている。米国経済全体の勢いも落ちるだろう。FOMC見通しは2016年の実質GDP成長率を2%台半ばと見ているが、私は2%に届かず1%半ば~2%とみている。利上げのペースは限られる。

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