円高ドル安が進み、2016年末は112円になる 円安?円高?円高と見るプロの論理

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――円はもはや弱い通貨ではないということですね。2012年の円安転換は経常黒字の減少が背景にあった。

内田稔(うちだ みのり)/1993年慶応義塾大学法学部卒、東京銀行入行。外国為替のトレーディングやセールスを経て2007 年から外国為替のリサーチを担当。2010 年シニアアナリスト、2012 年05 月より現職

それと、日銀の金融緩和への期待。だが、足元ではどうかといえば、追加緩和への期待は残っているが、毎月約10兆円も国債を買っており、買い増し余力は低くなっている。もう一段の円安株高を演出するのは難しい。

2015年12月のECB(欧州中央銀行)理事会では追加緩和が市場の予想の下限のレベルにとどまってしまったために、失望からユーロ高になってしまった。

日銀が追加緩和を行っても、同様の動きとなるおそれがある。問題は市場がその値動きを見てしまうと、黒田バズーカ=円安という神通力が失われてしまい、黒田総裁就任以前のように、バズーカは撃てず、“緩和したらかえって円高”ということになりかねない。

2015年は日銀がこれだけ通貨を供給していながら、ほぼすべての通貨に対して円高になったように、マネタリーベースの拡大が機械的に円高をもたらすわけではない。ECBもマネタリーベースを拡大しているが、ユーロはじわっと上がっている。

日銀の追加緩和はむしろ失望売りを誘う

――量的緩和の効果は失われているということですね。

量的緩和が波及する経路は、(1)名目金利が下がる、(2)期待インフレ率が上がる、(3)通貨安期待が高まる、の3つ。名目金利については、もう下げ余地がない、期待インフレ率については、日銀も困っていると思うが、原油価格が下げ続けていることでむしろ低下している。円安期待も以前よりは薄れてきている。追加緩和はむしろ市場の失望を誘う可能性のほうが高まっている。日銀の緩和=円安とはなりにくいだろう。

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