2016年夏に衆院解散・衆参同日選はあるのか 安倍政権の明暗を分けるものは?

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2016年の参院選に向けて、野党は「統一候補」擁立の動きを強めている。民主党と維新の党は国会での統一会派を結成。年明けには合流する可能性が大きい。共産党は「民主連合政府」を掲げて、民主党などとの選挙協力を提起。独自候補を取り下げて、民主党系の候補を支援する動きが出ている。

同日選となれば、野党各党はそれぞれの勢力拡大に懸命となるから、野党共闘を分断できる。安倍首相や菅義偉官房長官は、橋下徹前大阪市長が主導する「おおさか維新の会」との連携を進めているが、それもまた、野党勢力の分断が大きな狙いだ。とくに橋下氏の人気が高い関西地区では、「おおさか維新の会」が候補者を立てれば、非自民の票は分散されるからだ。

安倍首相の持論である憲法改正を実現するために「衆参両院で自民党を中心とする改憲勢力を3分の2以上にする」ことを正面から掲げて解散、衆参同日選に持ち込めば、選挙の争点は明確になる。安倍首相が「勝負に出る」には最大のチャンスだという見方も自民党内にはある。

同日選には公明党の強い反対

一方で、同日選には反対論も根強い。まず、公明党が同日選を極端に嫌っていることがあげられる。支持母体の創価学会員は選挙のたびに、知人らに公明党候補(比例区では政党名)への投票を呼びかける。一人ずつ、地道に支持を広げていく。衆参同日選となれば、衆参両院で選挙区と比例、計4種の投票を頼まなければならない。創価学会員の手間がかかり、負担が増えることは間違いない。だから、同日選は困るのだ。

同日選になれば、有権者の関心は高まり、投票率は上がる。固い組織票に頼る公明党にとっては、投票率が上昇すれば、その分、投票総数に占める公明党の比率が低くなる。それも同日選を避けたい大きな理由だ。

同日選で憲法改正を正面から訴えれば、護憲勢力が強く反発し、有権者の関心が高まって投票率がさらに上昇、自民党には不利に働くという見方もある。

ここ3回の総選挙の投票率(選挙区)と自民党の勝敗を見てみよう。
▽2009年=69%、自民党119議席で惨敗、民主党政権誕生
▽2012年=59%、自民党294議席で圧勝、安倍政権誕生
▽2014年=53%、自民党290議席で再び圧勝、安倍政権存続

要するに、自民党は低投票率の選挙で圧勝し、高投票率の時には敗れているのである。衆参同日選で憲法が争点となり、投票率が上がれば、自民党にとって有利とはいえない構図がよく分かる。

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