小学校で大流行「2分の1成人式」の"異様" 「美談」で済ませていいのか?

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木村:プライバシー権というのは、「人間関係を形成する自由を確保するために保障されなければいけない権利」とされています。

人間関係って、突き詰めて言えば「情報のやり取り」ですよね。最初はお互いをまったく知らないところから、名前を知り、連絡先を知り合って、どこで生まれたのかとか、どんな学校に通っていたのか、どんな家族構成なのか、という情報を交換しながら親密になっていく。

家族に関する情報はプライバシーの中でも核心的

木村草太(きむら・そうた) ●1980年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業、同助手を経て、現在、首都大学東京法学系准教授。専攻は憲法学。著書に『平等なき平等条項論』(東京大学出版会)、『憲法の急所』(羽鳥書店)、『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『未完の憲法』(奥平康弘との共著、潮出版社)、『憲法学再入門』(西村裕一との共著、有斐閣)、『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書)、『憲法の条件』(大澤真幸との共著、NHK出版新書)などがある。

あるいは逆に関係を持ちたくない人には、電話番号を教えないとか情報を制限することで、人間関係がある程度以上に深まるのを防ぐことができる。

だから、個人情報を自分でコントロールできなければ、関係を持ちたくない人と関係を結ばなければいけなくなったりする。また、自分から情報開示することによって相手と親しくなったり、恋人になったりとかするのに、その人はそのプロセスを踏めなくなっちゃうわけですよね。

内田:そうか、プライバシー権か……。 それは考えになかった視点です。

木村:プライバシー権の中でも、名前とかどの地域に住んでいるかというのはそれほど大事な情報ではないんですが、家族に関する情報はプライバシーの中でも核心的な情報です。「センシティブ情報」というものに当たる。

2分の1成人式というのは、そのセンシティブ情報を引き出させているということ。それはやっぱり、学校といえどもそう簡単にやってはいけないことです。

内田:しかも、その子の過去の写真や名前の由来なんかを、卒業式みたいに、体育館に親子みんなを集めた場で発表するんですよ。だからいろんなことがすぐに知れ渡っちゃう。親の職業もバレバレになる、という話もよく聞きます。

木村:2分の1成人式をうまくやっている学校というのは、たぶんそういうセンシティブな情報に触れずにやっているんだと思うんです。

内田:そうなんです。個人のバックグラウンドには入らずに、「これから何年後に、みんなはどういう高校生になっていたい?」とか、「どういう仕事につきたい?」といった発表をやっているところもあるんですよね。

でも実際にはまだ、プライバシーに踏み込んで「親が感動して泣く、子どもも泣く、それを見て先生が大喜びしてまた泣く」というのをやっているところが多い(苦笑)。

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