失敗しない就農ガイド、新規就農者の7割が農業だけでは生活できていない
反響は大きいが、補助金による就農支援の有効性は疑問だ。これまでも何度かそうした支援は行われてきたが、補助金頼みの生活設計となってしまい、切れた途端に生活が行き詰まるという事例が少なくないという。また、「準備型」については、2010年7月の技能実習制度改正でコストが上がった研修生の代わりに、労働力として使われるだけで終わるのではないかとの懸念もある。
都会で働く農家子弟の就農を促すNPO法人、「こせがれネットワーク」の宮治勇輔代表理事は、「農家出身でなく、まったく農業経験もない人の新規就農はウルトラC」だと言う。地域に足場がある「こせがれ」の農村回帰にこそ優位性があると見る宮治氏は、「青年就農給付金は弱い農業者を増やすだけではないか。票田を増やすだけのバラまき政策だ」と手厳しい。
実際、新規就農で成功するのは簡単ではない。全国新規就農相談センターが約10年以内の就農者を対象にアンケートを取ったところ、72・3%が、今の農業所得では生活が成り立たないと回答。うち6割が生計を立てられるメドが立たないと回答している。つまり就農者の4割が農業を続けられず、ギブアップ寸前の状態だ。就農後5年超の人でも3人に1人が、生計が成り立たず、メドも立たないと回答している。
農業法人に就職する道もあるが、待遇面が問題だ。求人を見ても、ほとんどが月給15万円程度。住み込みで食・住は無料としても、家族の生計を維持するのはとても無理だ。正確な統計数字はないが、新規就農者のうち3割程度が離農しているとみられている。
こうした現実を前に、新規就農者は減る一方。10年の新規就農者は、約4・5万人。ピークとなった06年の8・1万人から見れば、4割以上の落ち込みだ。しかもその半数は60歳以上で、40歳未満の若年層はわずか7660人にすぎない。