国内カラオケ市場飽和でもボーカロイド、K−POPなどの独自配信で差別化する--日野洋一・鉄人化計画社長
また、ビジネスモデルとしては、当社しか配信しない曲であれば、それを求めるお客様が非常に少数であっても囲い込める。彼らを分散させることなく、うちの店に集中させてカラオケを利用してもらえれば、その売り上げでコンテンツ開発のコストはカバーできる。これを仮にメーカーが配信するとなると、その曲が全国10万台のカラオケ機器に散らばることになり、もともとパイが非常に小さいのに、お客様も分散されてますます利用度が低くなる。そういう曲にメーカーは開発コストをかけられない。
■ニコ動からボーカロイド映像入手、韓国最大手メーカーから機種導入も
--鉄人化計画は昨年9月、「ニコニコ動画(ニコ動)」を運営するドワンゴと資本・業務提携し、ニコ動で配信されている“初音ミク”などのボーカロイド楽曲や背景画像などの提供を受けはじめた。今年6月には韓国カラオケ機器メーカー最大手のKumyoung社と組んで、最新のK−POPや韓流楽曲の配信が可能な同社最新機種を全店に導入している。これらも2割いるコアのカラオケファンをターゲットにした戦略の一環か。
(カラオケファンの存在が確認できた)250ジャンルの中でも、もはや狭い市場ではなく、メジャーなジャンルになっているものがある。それがボーカロイドやK−POPだ。
たとえばAKB48ははるかにマスマーケティングだが、本当のAKBファンだったら、カラオケの背景画像にAKBの本人たちが出てこなければダメ。ボーカロイドもK−POPも、あらゆるファンは本物志向が強い。ただ、AKBの場合は、“中間層”を含めてファンのピラミッドの層が厚い。AKBにも当然コアのファンがいるが、自分ではわざわざコンサートのチケットを買わなくても、友人がチケットを取れたら「行く行く」という人もたくさんいる。
ところが、もっと市場の狭いジャンルのファンには中間層がおらず、ピラミッドの頂点だけで成り立っている。知らない人はまったく知らないし、裾野の広がりがない。彼らはロイヤリティが非常に強く、なおかつ本物志向のコアなファン。彼らに対応するにはコンテンツは限りなく本物でなければいけない。当社が採用している音源は、基本的にMIDI(シンセサイザー搭載の電子楽器による演奏情報)で再現したものではなく、ナマの原盤を使うケースが多いし、背景映像もファンの人たちにオーソリティを感じてもらえる、本人の映像などを重視している。
ボーカロイド曲についても当然、その背景映像は本物でないといけない。ドワンゴと提携したのはそのためだし、K−POPについては韓国メーカーから供給を受けたほうが、新しい曲が早く配信され、本人映像も手に入れやすい。今、けっこう力を入れているのはインディーズだが、すべて本人の映像を採用している。