安保反対「SEALDs」、あの後に続く模索 デモから3カ月
そうした閉塞感のなかで登場したのがSEALDsだった。本間はこう話す。
「僕らには、安保関連法制に反対というほかにイデオロギーがない。党派性がないのがよかったんじゃないか」
野党協力がこのまま進めば、夏の参院選は、市民と野党連合が自公政権に対峙する形になる。
「選挙のときにアジェンダを設定する権利は、市民の側にあるはずだと思うんです。1億総活躍や経済政策じゃなく、市民が問うているのは次の選挙も安保関連法制だと訴える。これって市民の政治参画の新しいフェーズだと思うんです」(本間)
若者、政治、希望。SEALDsが背負わされたものの大きさは、いまの政治の貧困と背中合わせのようにも映る。
「彼らが政治を変えられるという考えは危険で、間違っている」
東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信(しん)(27)は、そう話す。佐藤の分析によれば、彼らを際立たせているのは、その“政治力”ではない。
「SNSで自分の考えをつぶやき、常に誰かに見られる日常を送ってきた。人生をセルフマネジメントすることをみんながやってきた世代。だからこそ、社会に向かって自分の姿を見せることがうまい」
ファッショナブルに叫び、エモーショナルに躍動する。その姿に飛びついたマスコミがつくり上げたのが、この夏の現象だったと佐藤は考える。だが、彼らが社会に残したのは、そんな薄っぺらな残像だけなのか。
同じ熱源持つ10代
東京・池袋の立教大学で15年12月、学生グループSPAR(スパー)の活動報告があった。安保関連法制の問題点について学び、街頭で考えを語ってきた。発足は同年6月。きっかけはSEALDsのデモに参加したことだった。高橋真由(まゆう)(19)が話す。
「最初は3人でした。1人でも抗議する人間が増えたら、それだけ法案の成立を止められる可能性が高まると思って、SPARをつくりました」
仲間は約20人になった。成立阻止はできなかったが、活動はやめない。最後に、益子亜明(ましこあみん)(18)がスピーチした。
「沈黙は賛成につながりかねない。学び続けないと、大きな力にやられちゃう。意思を示し続けることが、社会の空気を変える第一歩になると思っている」
報告が行われた教室に集まったのは、友人や教員ら20人。SEALDsの抗議とは規模が違う。だが、彼らは確かに、SEALDsと同じ熱源を持っている。
(文:編集部・宮下直之)
(文中敬称略)
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