現役層の就労支援に加え貧困高齢者の増加を防げ
これらの制度を利用した人は、その後、生活保護受給者になることが非常に多い。また、貸付金が焦げ付くケースも多発している。それなら、「第2のセーフティネット」利用後の生活保護受給を原則禁止するなどの見直しも考えるべきだろう。
生活保護予備軍の存在
一方、生活保護受給者急増のもう一つの要因である生活困窮高齢者の増加はより深刻だ。稼働年齢層の受給者を減らすことは簡単ではないにせよ、就労支援など対策はわかりやすい。最終的には経済や雇用を改善させれば、ある程度減らすこともできる。これに対し生活困窮高齢者の増加は、急速に進む人口の高齢化という構造問題が背景にあり、抜本的な対策が立てにくいからだ。
そもそも、生活保護受給世帯の4割超を占める最大の層が65歳以上の「高齢者世帯」であり、構成比は横ばいながら絶対数は稼働年齢層よりもはるかに増えている。
「高齢化率が上がるにつれ、これから生活困窮高齢者はどんどん増えるだろう。現役世代でも若年層中心に非正規雇用が増えており、彼らの多くは将来、無年金や低年金となる。生活保護受給者はいずれ、300万人になってもおかしくない」と、前出の岡部教授は語る。
浅羽隆史・白鴎大学教授の試算では、現在の受給世帯比率(2%台後半)のままでも、人口高齢化の結果、12年度3・7兆円の生活保護費は30年度には7兆円弱に達する。
生活困窮高齢者の問題は、年金制度のあり方とも密接に絡む。自営業者向けなどの国民年金は、保険料を40年間払い続けた満額の人でも月6・5万円程度にしかならない。企業などの正規雇用者として厚生・共済年金の加入歴がない人なら、ほとんどのケースで生活保護の給付水準以下だ。それでも多くの高齢者は生活保護を受給せず、預貯金を取り崩すことなどでやり繰りしている。