現役層の就労支援に加え貧困高齢者の増加を防げ
08年ごろまでは、稼働年齢層の生活保護申請をほとんど受け付けない自治体も多かったが、その後、非正規雇用者の失業やホームレスが増加したうえ、世論を反映した政府の方針転換もあり、稼働年齢層でも生活保護を受けやすくなったのである。
現在進められている制度見直しでも、稼働年齢層に対する就労・自立支援が大きなテーマになっている。
ここで問題なのは、生活保護の制度自体が就労のインセンティブを阻害していることだ。生活保護受給者が就労収入を得ると、収入に応じて生活保護給付額を削られてしまう。苦労して働いても、働かずに生活保護をもらっても、得られる金額があまり変わらないのだ。
そこで、政府が検討しているのが、「就労収入積立制度」だ。これは生活保護の受給期間中、就労で得た収入の全部または一部を積み立てておき、保護から抜ける際に本人に返還する制度だ。積み立てている間は就労収入は使えないが、就労収入が生活保護の支給額を下回っていれば、生活保護は従来どおり支給される。
この制度に関し、生活保護に詳しい岡部卓・首都大学東京教授は、「生活保護の出口で手持ち金を持たせてあげれば、自立しやすくなる」と言う。鈴木亘・学習院大学教授も「受給者は生活保護から脱した途端、家賃や社会保険料などの負担が生じ、以前より生活が苦しくなる。それを防ぐためにも必要だ」と指摘する。
このほか、稼働年齢層の生活保護受給を減らすためには、その一歩手前の段階で未然に防ぐことも必要だ。民主党は09年に政権に就いて以降、「最後のセーフティネット」である生活保護の手前に位置する「第2のセーフティネット」として就労支援制度、総合支援資金貸付制度、住宅手当といった貸付・支給制度の創設・拡充を図った。ところが、これがほとんど機能していないのだ。