米中経済戦争、これから何が起きるのか 経済覇権をめぐる"AIIB対TPP"の行方

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中国政府の資料では一帯一路の沿線には中国を含めて65カ国があり、総人口は世界の6割にあたる44億人。GDP総額は21兆㌦で世界の3割を占めるという。「一帯一路」には全体を縛るルールは何もなく、中国と周辺国との二国間関係の束でしかない。中国は周辺国との「ウィン・ウィン」関係を強調するが、国力で圧倒的に勝る中国が決定権を握っているのは明らかだ。

それを予感させるような動きもある。中国は周辺国や米国の反対を押し切って南シナ海の人工島造成を続けている。中国による南シナ海の支配が確立されれば、米軍はインド洋以西へのアクセスが難しくなる。そうなったとき、中国の空母は一帯一路沿線の諸国に圧力をかけるための切り札になるだろう。

中国が「一帯一路」建設を進める理由は、①TPPを含めた米国のアジア太平洋戦略への対抗、②国有企業が抱える膨大な過剰生産能力の解消、③世界最大の外貨準備の運用改善、という3つに集約できる。

中国の総人口に対する生産年齢人口(15歳から65歳)の比率は10年にピークをつけ、低下を始めている。働き手の数が減少し、養われる側が増えることで、経済成長の潜在力は落ち始めた。投資によって経済成長を支えるこれまでの仕組みは維持できない。

行き先は海外しかない

2012年に共産党トップである総書記の座を胡錦涛氏から引き継いだ習近平氏は「新常態(ニューノーマル)」という概念を打ち出して、中国の高成長の終わりを宣言した。そこであふれ出す生産能力や溜め込んだ膨大な外貨をどこに振り向ければいいのか。行き先は、海外にしかない。一帯一路はそのはけ口として用意されたのだ。

欧州諸国、とくに英国はこれをビジネスチャンスとみた。

米国の国際政治学者、イアン・ブレマー氏は、米国の制止を振り切って英国がAIIBに参加した背景について、自国のインフラを整備する資金がない英国が中国を頼ったと指摘。「米英の特別な関係がどこかに消えてしまい、それが英中関係に変わろうとしている」と話している。そのことに米国もショックを受け、米国の議会対策に足をとられてなかなか前進しなかったTPP交渉が一気に動き出したという経緯がある。

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