鉄道員の「英語力」はどこまで通用するのか 二子玉川では独自プロジェクトが進行中

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東急電鉄、東京メトロ、そしてJRが乗り入れる一大ターミナルの渋谷駅。最近ではスクランブル交差点が世界的な観光名所となり、見物に訪れる外国人の姿が絶えない。

東急と東京メトロは共同で渋谷駅に観光案内所を設置している。多言語対応のスタッフが常駐して、英語だけでなく、中国語、スペイン語にも対応している。「ハチ公は何番出口か」「ホテルはどこにあるか」といった、出口や行き先に関する問い合わせが多いという。

「せいぜい六本木や池袋程度かと思っていたら、富士山への行き方を聞かれたこともある」(スタッフ)。ちなみに渋谷からだと、富士山方面へ向かうバスが渋谷マークシティから出ている。過去には「電車のラッシュを体験したいが、どうすればよいか」という質問もあったそうだ。

東急は観光案内所だけでなく、英語が話せる「コンシェルジュ」と呼ばれる専属スタッフを渋谷駅に配置している。3カ所のカウンターに常駐するほか、改札口や切符売り場付近を巡回して、乗り換え案内や駅周辺の情報案内を行う。

二子玉川では外国人客が急増

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東急が案内業務に使っている「おもてなしボード」

渋谷以外の駅では、基本的な事項を外国語に翻訳した「おもてなしボード」というコミュニケーションツールを、駅長のいる駅に配布。このボードを使って外国人客に案内業務を行っている。

ちなみに、外国語に堪能なコンシェルジュや観光案内所のスタッフは、東急で駅務を担当する正社員ではなく、グループ会社の業務委託社員だ。外国人客が多い渋谷、横浜、二子玉川の駅係員には、英会話レッスンを実施している。今後はほかの駅にも広げていく可能性があるという。

二子玉川は今春に全面開業した複合施設・二子玉川ライズにエクセルホテル東急がオープンしたほか、オフィス棟にネット通販大手の楽天が入居した。楽天といえば、社内公用語が英語で、外国人従業員も多い。

俄然、国際色が豊かになった二子玉川駅には外国人客も急増。それまで1日1~2人だった外国人からの問い合わせが、ライズの全面開業後は10~20人と大幅に増えたという。

こうした状況を見越して、二子玉川駅では昨年9月に駅係員の有志たちが、英語の接客サービス向上を目指すプロジェクトチームを立ち上げた。吉田明華さん、大谷淳さん、目代貴啓さんという若手3人。上からの指示ではなく、自発的な取り組みだ。

2020年には沿線の施設が東京オリンピックの会場や選手団の練習場として検討されていることもあり、二子玉川駅にはさらに多くの外国人がやってくると考えられる。「少しでも英語のコミュニケーションに慣れておきたい」という動機から、英語の勉強会を始めた。

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