また、よりコンシューマー製品に近い例としては、2015年6月にオーディオクエストから発売されたヘッドホン「NightHawk」が挙げられる。本製品はチョウの羽のような複雑な格子細工状の「バイオミメティック・グリル」を採用しており、それによって音楽の歪みや共振を解消するとされているが、この形状は3Dプリンタでしか実現できないという。
3Dプリンタの特徴とは?
製造業メーカーなどにとっては、3Dプリンタを用いることにどのような意義があるのだろうか。また、今後どのような形で普及しうるのだろうか。
3Dプリント(海外では「Additive Manufacturing(付加製造)」という名称で呼ばれることが多い)の特徴について、これまでさまざまな説明がなされてきたが、ここではそのメリットを次の3つに整理したい。
②オンデマンド生産に対応可能であること
③新形状・新機能が実現できること
①の多品種生産への対応が可能であるとは、個別性が高い、あるいは多数のバリエーションが求められる製品・パーツについて、既存の製法に比べてスピーディに出力できることを意味する。顧客からのカスタマイズニーズへの対応や、少量多品種製造が求められる製品・パーツへの対応が容易になる。
その特徴を生かすとすれば、たとえば「自分の足の形にフィットする靴」のように、顧客一人ひとりに寄り添う製品の製造が挙げられる。
「モノ余りの時代」「情報過多の時代」と言われて久しいが、一律で大量生産された製品ではなく、自分の状況やニーズにより最適化された製品を求める流れは、今後も強まっていくとみられる。その中において3Dプリンタの特性は、大きな武器となる可能性がある。
②のオンデマンド生産対応とは、必要な場所で、必要なときに、必要なだけ出力することが可能であることを意味する。ロングテール商材の在庫レス化によるコスト削減や、現地生産による物流コスト削減などが該当する。
その特徴を生かすとすれば、「データ物流と現地生産」というような、サプライチェーンのあり方を大きく変容させる方向性が考えられる。
3Dプリンタの中にも高額機種は存在するものの、既存の工場のような設備を整えるのと比べれば少額の投資で済む。そうだとすれば、生産拠点で製造したものを時間とコストをかけて輸送するよりも、3Dプリント用のデータを送り、現地の3Dプリンタで製造したほうが効率的ではないか、という議論が出てくるだろう。
実際に、米国の物流業者であるUPSはすでに自前の3Dプリントセンターを設立しているし、米国郵政公社(USPS)では3Dプリンタの活用可能性について、専門部隊が検討を行っている。
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