山手線「新型車両」は、なぜいま必要だったか 車両製造の都合など4つの理由から推察!

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2015年11月30日の夕刻に外回りの電車としてデビューを果たしたE235系はINTEROS(INtegrated Train control/communication networks for Evolvable Railway Operation System)と呼ばれる次世代車両制御システムの不調により、ホームドアが開かないといったトラブルを繰り返し、大塚駅で運転台のモニター装置に多数のエラーを表示した挙げ句、ブレーキの利きが甘くなってしまった。結局、営業運転は打ち切られた。

INTEROSのトラブルの原因はソフトウェアのバグとも言われているが、まだ明らかにされていない。12月14日現在、E235系は営業に就いていないので、ソフト面というよりも機器面でのトラブルとも考えられる。耐ノイズ性向上のためにINTEROS用イーサネット回線と直流100Vの電車制御用回路とを極力分離するとされているものの、連結面などではやむなく近づけた場所があり、そうした場所で誤った信号が発生したのかもしれない。

「設計ミスや誤った信号などあり得ない」という意見もわかるが、このような事例は過去にも起きている。1974年11月12日、東海道新幹線新大阪駅に設置されたATC(自動列車制御装置)は駅に停止しようと進入する列車に対して時速210kmというあり得ない信号を表示するトラブルが発生した。原因はATC装置パイロット電源の自動電圧調整器の内部回路にフィードバック回路という、鉄道信号には組み込んではならない回路が構成されていたからである。

という次第で、もしもINTEROSの機器面に不具合があるとすれば、営業の再開にはもう少し時間がかかりそうだ。

寿命ではない車両を置き換えるワケ

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現在山手線を走っているE231系500番台。最も古くても14年前の製造だ(写真:hide/PIXTA)

E235系が山手線に投入されたそもそもの経緯もわかりづらい。

JR東日本は「この量産先行車(筆者注、今回投入されたE235系)を『東京の顔』である山手線に導入し、次期通勤型車両の標準として今後の展開の第一歩と位置付けています。」(水谷恵介、「E235系一般形直流電車量産先行車の概要」、「Rollingstock & machinery」2015年7月号、日本鉄道車両機械技術協会、18ページ)と説明する。

前後の文脈から、「INTEROSという画期的な車両制御システムの開発に成功したので、東京一の通勤路線の山手線用の電車に搭載して投入することとした」という意味らしい。

現在山手線で使用されているE231系500番台は2002年1月から2005年4月にかけて11両編成単位で投入されており、製造からの経過年数は最も古い編成で14年、最も新しい編成で12年となる。半導体を搭載した電気機器などはそろそろ更新の時期を迎えるものの、車両自体は寿命ではない。

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