山手線「新型車両」は、なぜいま必要だったか 車両製造の都合など4つの理由から推察!

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3)踏切事故対策

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山手線唯一の踏切、第二中里踏切を通過する電車(写真:天谷利文/PIXTA)

京浜東北線のE233系についての説明で挙げた運転士後方のクラッシャブルゾーンとは、踏切事故によって先頭車が強い衝撃を受けた際に備えたものだ。この部分が積極的に変形することで衝突時に運転士や旅客の生存空間を確保し、衝撃そのもののショックも和らげる役割を果たす。

先述の説明のとおり、E231系500番台にはクラッシャブルゾーンは設けられていない。ならば山手線では踏切事故の事故の可能性は皆無かというとそれは違う。駒込-田端間には環状運転を行う山手線ただ一つの踏切、第二中里踏切があり、自動車も通行する。

JR東日本としては安全を考えて、山手線のE231系500番台をできる限り早く置き換えたいと考えたのであろうか。ちなみに、転用されたE231系500番台が走る中央・総武線緩行三鷹-千葉間に踏切は存在しない。

導入は「大人の事情」だった?

4)次世代ステンレス車両「sustina」のPR用

総合車両製作所はステンレス鋼でつくられた車両の新たな製造方法である「sustina」を開発し、その量産第一号としてE235系が選ばれた。sustinaは車体の軽量化、外観の向上、構体水密化の強化の3つ目標の実現を目指したという。これらはステンレス鋼製の車両がアルミニウム合金製の車両に比べて劣っていた点である。

JR東日本は、総合車両製作所がいわゆる世界のビッグスリーと肩を並べるほどの世界的な鉄道車両メーカーへと育てたいという意向をもつ。ビッグスリーの一つ、ボンバルディア・トランスポーテーションは高速鉄道用の車両にもステンレス鋼製の車体を採用している。この分野で総合車両製作所がボンバルディア・トランスポーテーションに追い付けば、高速鉄道用の車両の受注も見込めるかもしれないと考えるのは自然の成り行きだ。

となると、JR東日本としては何としても海外の鉄道関係者にsustinaを体験してもらう必要がある。そのとき、sustinaの量産第一号が東京の都心から遠く離れた場所を走っていたらいかがであろうか。山手線はこれ以上ないPR場所であると言える。

以上の4つの仮定を立ててみたものの、山手線の利用者に恩恵がありそうな点は踏切事故対策くらいしかない。E235系はどちらかというと「大人の事情」で山手線に投入された電車だと筆者は考える。

しかし、経緯はどうあれ、せっかく登場したのだから、利用者に喜ばれる電車を目指すべきだ。何はともあれ、いまはINTEROSの不調を解決しなければならない。
 

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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