グローバル人事の「目」(第5回)--現地キーマンを取り込む手法とは?
駐在員を機能させて「現地ビジネスのさらなる成功」を早期に実現させるには、現地社員、特にキーマンを取り込み、駐在員の狙い・意図に沿って組織を動かしていくことが必須となる。
実際、現地の重要な業務は現地キーマンが取り仕切っている事が多く、そう簡単に新任駐在員の意見を聞き入れてくれないのが実態である。そこで現地キーマンとのコミュニケーションを深め、現地キーマンを取り込む武器として「ワークマット」と呼ばれるディスカッションツールが使用されることが多い。
ワークマットとは
ワークマットとはA0サイズ(縦約80cm × 横約120cm)程度のポスターのようなもので、テーブル上で4~5人がそのワークマットを囲み議論ができるようになっている(写真)。そのワークマットにはカードなどを使った3~5個の議論用のワークが設定されており、テーブル毎にメンバー全員で順を追って議論を進めていけるように設計されている。このツールは写真やカード等を用いて意見を可視化しながら理解を深める「ビジュアル思考」を取り入れたもので、海外ではコミュニケーションやアィディア出しのツールとして急速に普及している。
有名なところでは、ビジネスモデルの設計を検討するために書かれた「ビジネスモデル・ジェネレーション−ビジネスモデル設計書」(アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール(著)、小山龍介(訳)翔泳社)の中で解説されているビジネスモデルキャンバスという名称のワークマットやDDI社の経営シミュレーション用ワークマットがある。
戦略変更を理解させるワークマットの活用例
日系大手ハイテクメーカーのS社は経営トップの交代に伴い、変更となったグローバル戦略を海外現地法人に徹底させるためにワークマットを活用している。今までは文章で書かれた戦略を駐在員が発表した上で、ワークショップ等で議論してきた。
その上で、より戦略を徹底するために戦略のスローガンをポスターで張り出したりする等、現地社員の目に触れる機会を増やすように努力してきた。しかし経営トップが主要海外拠点に視察で訪れてみると、現地社員は従来のやり方を簡単には変更しないことが判明した。