原発事故の警戒区域解除は「早すぎた」 南相馬市・住民アンケートで国や市への批判が続出

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市長がきちんと国、県、東京電力と交渉していると思うかを尋ねた設問では、「交渉をしていると思う」と答えた人はわずか3人(3.6%)。反面、「交渉していないと思う」と答えた人が64人(77.1%)に達した。

旧警戒区域の除染作業は国が責任を持って実施することになっている。しかし、仮置き場の設置場所も決まっていない。

除染作業の見通しが立っていないうえに、放射線量がどれだけ下がるかも未知数。そのため、「放射線量が(現在の半分以下の)年間10ミリシーベルト以下になった場合」でも、「戻る」と答えたのは17人(20.5%)。これに対して「戻らない」と答えたのが43人(51.8%)にのぼった。

川房行政区の区長を務める志賀信夫さん(63)は、「先祖の墓を守るために、将来は自宅に戻りたい」と語る。ただ、「自由に出入りしていいといっても今はやることもないし、(健康を害したとしても)自己責任を問われる。(現在の高い放射線量を浴び続けた場合)正直なところ、命にかかわるのではないかとすら思う」と不安を吐露した。

 


自主的に防護服を着る志賀信夫さん。眼前に荒れ果てた田畑が広がる

 

 


浪江町との境界に立ちはだかるバリケード

 

(岡田広行 =東洋経済オンライン)

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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