日の丸有機ELの憂鬱、韓国勢に太刀打ちできるのか またも国策会社構想が浮上

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それでも韓国勢が前のめりなのは、「単価下落でテレビ市場が頭打ちとなる中で、事業拡大には高付加価値な有機ELテレビを増やすしかない」(アイサプライ・ジャパンの金桂煥氏)。当面は赤字を垂れ流してでも、大型有機EL量産技術を確立する──という“気合”と、それが可能な体力を備えている。

一方、ソニーは2007年には世界初の11型有機ELテレビを発売。現在は業務用の25型有機ELモニターを販売する。その技術は依然として世界トップクラスだ。パナソニックは高分子の有機材料をパネルに塗布する「印刷方式」の技術開発を進めている。こちらは量産には程遠いが、実現すれば大幅なコストダウンが可能になる次世代技術だ。

韓国勢も量産化に成功していない以上、両社が本気で共闘すれば挽回のチャンスは残っている──。しかし、「テレビはコア事業ではない」(パナソニックの津賀一宏社長)と言い切るように、両社ともに巨額赤字を計上したテレビ事業の縮小が課題で、有機ELで大勝負を仕掛ける余裕はないのが現実だ。

08年から大型有機ELディスプレーの基盤技術開発プロジェクトを主導してきた新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「ここまで日本メーカーが弱体化するとは思わなかった」(電子・材料・ナノテクノロジー部の吉木政行主幹)と本音を漏らす。

国費33億円を投じるプロジェクトでは、ソニーやシャープ、東芝などパネルメーカー、装置・材料メーカーなど計11社が共同で、有機ELディスプレーの大型化を目指してきた。5年目の今年は最終年度だが、めぼしい成果は挙がっていない。参画企業からは「生産技術開発が中心で、メリットがあるのは装置メーカーくらい」と聞こえてくる。

その成果を盛り込んだ装置を開発できても、国内に売り先がなければ韓国や台湾へ売るしかない。皮肉な話だが、「やむをえない。ビジネスを止めるわけにはいかない」(NEDOの吉木主幹)と諦め顔だ。

 

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