4代目プリウス、好発進を素直に喜べない事情 ほとんどが「走り」を試さずに買っている

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もう一つ、新型プリウスが、トヨタが進める新しい自動車づくりのやり方「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を取り入れた第1弾ということも走りにこだわる理由だ。幅広い車種で使われるTNGAの車の走りが悪ければ、この先長期間にわたってトヨタ車の走りはダメということになる。

幸いにも、新型プリウスは多くのモータージャーナリストらからの高い評価を受けている。自動車の運転に関しては素人同然の筆者でさえも、新旧の走りの違いは歴然と感じられた。

「今まで(のプリウス)は燃費がいいからこの程度の走りといった面があったが、(新型は)気持ちいい加速感でようやく普通の車になった」(加藤光久副社長)とトヨタもその出来映えに手応えを感じている。

「乗ってみなきゃ」「エロいな」に込めた意味

このトヨタの自信を端的に表すのが、新型プリウスのテレビCMだ。CMでは、国民的な人気歌手で俳優の福山雅治さんに「乗ってみなきゃわかんないけどね」、「けっこうエロいな」と言わせている。

「(新型プリウスの違いを実感してもらうため)お客様にまず乗っていただきたい。だから、福山さんに「乗ってみて」と言っていただいている。販売店には試乗コースを工夫して欲しいとお願いしている」と国内販売本部副本部長の佐藤康彦常務は説明する。

「エコ」ではなく、あえて「エロい」という言葉を使ったのも意図がある。「福山さんはCMの中で哲学者という設定。哲学的にエロスというのは官能的。走りやスタイルが官能的ということをキーワードで伝えた」と語る。

そこまでこだわったにもかかわらず、走りを確かめずに売れていく現実。「顧客はプリウスに走りを期待していないのかもしれない。少なくとも走りが認められたと喜ぶのは早い」と前述の販社社長は警鐘を鳴らす。

新型プリウスは年明け以降、米国を皮切りに海外でも発売される。その走りが本当に評価されるのか。判断を下すにはもう少し先になりそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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